カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

ユナイテッド・テクノロジーズはちょっと割安かもしれない。

 

先日、ユナイテッド・テクノロジーズは、分社後に航空機部門とレイセオンを合併させると発表しましたね。まあ、大企業同士の合併なので、独禁法の問題もあるでしょうし、防衛関連セクターなので、様々な機関の審査が必要になってきます。特に中国当局の審査が必要になった場合、審査が長引いたりすることが考えられます。なので、合併が成立するかは不透明ですが、もし、無事に合併が成立すると仮定した場合、ユナイテッド・テクノロジーズの株は少し割安なのではないかと思っています。計算や考え方が間違っていなければ(笑)。ちょっと長いですが、今回はその理由を書いていきます。

 

 

と、本題に入る前に、ユナイテッドテクノロジーズが今後何をするのか知らない人もいると思うので、簡単に書きたいと思います。ユナイテッドテクノロジーズはまず、会社を航空機事業とエレベーター事業のオーチス、そしてビル空調設備事業をそれぞれに分社します。その後、航空機部門はレイセオンと合併する予定です。

 

 

 

今回のレイセオンとの合併発表では、ユナイテッド・テクノロジーズ分社後の3つの会社の株価がどのくらいになるか、ヒントを与えてくれているとカナリーは考えています。では何がヒントとなり、そこからどのようなことが分かるのでしょうか。

 

ヒント1. 航空機部門の新会社とレイセオン1株の交換比率は2.3348である。

 

このヒントにより、航空機部門の新会社の株価がおよそ、75.95ドル前後になると考えられます。というのもレイセオンの株価が177ドルなので(6月14日の終値)、そこから交換比率2.3348を割ると75.9ドルになるからです。もちろんこの新会社の予測株価はレイセオンの株価変動によって変化しますが…。

 

ヒント2. 航空機部門の新会社の株主構成比率は、レイセオン株主43%、ユナイテッドテクノロジーズ57%となる。

 

このヒントによって、新会社の株式数が約1519百万株になることが分かります(式はレイセオンの発行済み株式数×2.3348÷43%)。そうするとユナイテッドテクノロジーズの株主が持つ新会社の株式数は約866百万と考えられます。

さて、ユナイテッド・テクノロジーズの現在の発行済み株式数は862百万と、先ほど導いた866百万と近しい数字です。ということは、分社の際、ユナイテッド・テクノロジーズ株主は1株当たり、航空機部門の新会社の株式を1株ほど受け取ることになるのではないかと、ざっくり見積もることができます。

 

 

ユナイテッドテクノロジーズの株価は125.30ドル(6月14日終値)です。この株価には、航空機事業、エレベーター事業とビル設備事業の市場評価が反映されています。

 

今までは、これらの事業それぞれにどのくらいの株価が付くのか分からなかったわけですが、レイセオンとの合併発表によって、予測することができます。まず、先ほども述べた通り、航空機事業には75.9ドル辺りの値がつくことが考えられます(現在のレイセオンの株価から考えて)。そして、残りの2つの事業には125.30(UTXの現在の株価)から75.9ドルを差し引いた49.34ドルの値が付きそうだと予測することが出来ます(エレベーター事業とビル設備事業の2つの事業合わせて)。つまり125.30という現在の株価の約60%が航空機事業で構成され、残りの40%はエレベーター事業と空調設備事業の時価評価と考えることができるわけです。

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  • ちょっとおかしい株価とセグメント別営業利益の関係

 

しかし、ユナイテッド・テクノロジーズのセグメント別の営業利益を見てみると、エレベーター事業とビル設備事業が全体の営業利益の6割を占めており、航空機事業は約4割ほどしか占めておりません。

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utc annual report 2018 より

 

 つまり、下の図の通り、セグメント別に対する市場評価と実際のセグメント別の営業利益がミスマッチで、ユナイテッド・テクノロジーズの株価は少し不合理ではないかとカナリーは考えているわけです。

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もちろん、それだけ航空機事業への期待値が高く、エレベーター事業とビル設備事業への期待値は低いということかもしれません。しかし、エレベーター事業とビル設備事業がそこまで悪いビジネスかというとそうでもありません。以下が過去3年の業績です。

 

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UTC annual report 2018


まあ、とびきり良いとも思いませんが…。

 

ただ、もしエレベーター事業とビル設備事業を合わせた株価が49.34ドルだとすると、エレベーター事業とビル設備事業の営業利益に対する株価倍率はたったの7倍で、仮に法人税率が30%程だと考えた場合、PERは10倍となります。これは少し割安ではないかと思っています。というのも例えば、エレベーター事業で同業のシンドラーエレベータの株価はPER24倍で売られているからです。もちろん、同業だから常にPERの水準が同じというわけではありませんが、PER10倍と24倍というのは開きが大きいように感じます。

 

つまり何が言いたいかというと、航空機事業に対する株式市場の評価は妥当かもしれないが、他の2つの事業に対する評価が低いのではないか。もしそうであれば分社後に受け取った3事業の株式によって利益を得られるのではないか。

 

と言いたいわけです。

 

現在、効率的市場仮説が金融市場において一般的な考え方ですが、スピンオフや分社といったコーポレートアクションが起こる時、株式市場は過ちを犯し、割安な値段を付けることがよくあると言われています。ですので、ひょっとしたら、今回の分社イベントは投資家にとってチャンスになるかもしれません。といっても現時点でカナリーはあまり自信がありません(笑)。というのも、この話は推測によって成り立っているからです。もう少し考えてみたいと思います。

 

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スプリント合併が難しいと思う理由

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昨日、FCC(連邦通信委員会)の委員長が、スプリントとT-MobileUSの合併を承認する意向であるとのニュースが流れました。合併の成立は難しいと考えていたカナリーにとっては驚きでした。しかし、依然として司法省の審査が残っており、司法省の審査を乗り越えるのは難しいとカナリーは考えています。もちろん合併が成立する確率は0ではありませんが、合併が成立したらミラクルだな(笑)と思っています。今回はその理由について書いていきたいと思います。

 

 

  • 合併成立へのハードル

合併のハードルは独占禁止法。基本的にこの一点です。合併が難しい理由として中国との安全保障の問題、ソフトバンクとの関係、日本企業の邪魔をしているなど、うんたらかんたら言っている人もいますが、もしこの辺りの点が問題であれば、CFIUSという外資参入を規制する政府機関が買収を承認しません。既にCFIUSは買収を承認しているので、残るは司法省の独占禁止法の審査が重要なハードルとなります。

FCCが合併を承認する見込みなので合併成立の可能性は高まりましたが、合併は決まったようなものと考えるのは時期尚早だと思います。というのも、司法省はFCCとは別の機関であり、FCCは「通信の公共の利益(技術革新も含めた)」を考えるのに対して、司法省は「独占禁止法や市場競争」について考えており、似てはいますが、焦点が少しだけ異なっています。ですから、FCCが「合併は公共の利益になる」と考えても、司法省が「合併は独禁法違反だ」と考え、反対すると合併はそこで破談となります。では独禁法審査がどうして厳しいのか見ていきましょう。

 

これは皆さんもご存知の通り、アメリカの携帯事業が寡占市場だからです。と、言っても具体的になぜ、そしてどれくらい難しいのかピンと来ないと思うので、HHIという具体的な指標で説明したいと思います。

HHIとは特定の市場の寡占度合いを測る指標で、司法省が独占禁止法の審査をする際に用いる重要な指標です。以前は、この指標で買収を承認するか否かを決めていました。現在はHHI以外の面も考慮して審査をするようですが、依然としてHHI独禁法審査の上で重要な指標です。指標は0-10000で表され、10000に近づくほど市場寡占度が高いビジネスであることが示されます。

  • 司法省の判断基準

司法省は買収成立前後のマーケットのHHI数値と、HHIの増加分に着目し、一定の判断基準を設けて審査をしています。以下の表は司法省が合併によって競争が制限されると考えている基準です。

合併後のHHI HHIの増加分
1500まで 特に問題なし
1500-2500 250以上の増加
2500以上 150以上の増加

 合併後のHHIが1500以下の市場やビジネスの大型買収にケチがつくことはあまりありません。しかし、HHI1500以上の市場に属する企業が合併、買収を行おうとすると、司法省、または公正取引委員会から厳しい目が向けられ、HHIが2500以上の市場だと大型買収、合併の承認を得ることがより難しくなります。

  • 携帯市場のHHI

では携帯市場のHHIを算出したいと思います。HHIは各企業のシェア(%)の二乗を合計して算出されます。例えば靴市場に参入するA社、B社のマーケットシェアがそれぞれ50%の場合、50の二乗 + 50の二乗でHHIは5000となります。

 

ではアメリカの携帯市場はどうなのか。以下のグラフが2018年のマーケットシェアになります。

 

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引用; Competition in the U.S. Wireless Services Market, Anna-Maria Kovacs, Ph.D., CFA

 

これを基に現在のHHIを算出すると約2776になります。そして、買収後に予測されるHHIは3259となり、増加分は483となります。この数値を司法省の判断基準に照らし合わせてみると、「競争が制限されるであろう基準」を大きく超えており、司法省が合併に難色を示す理由がよく分かると思います。

 

  • 司法省がOKする確率は35%か!?

カナリーが持っている1996年から2011年のデータ(ちょっと古いです…)によれば、今回のケースと同じように、買収後の市場のHHIが3000-3999になり、HHIの増加分が300-499となる買収案件は合計で14件あり、そのうち買収が成立しているのは5件です。残りの9件は買収不成立となっています。このデータから、今回の買収が成立する確率は35%ほどと考えてよいかなと思います。最近の傾向をみると、もう少し高い気もしますし、アナリストの中には50-60%という人もいるようですが…。

データ引用: Merger Arbitrage Second Edition; How to Profit from Global Event-Driven Arbitrage

  • 大型買収には追い風が吹いている

ここまでのところ、買収成立を願っているソフトバンクやスプリント投資家の方たちにとってはネガティブな話になったかもしれません。しかし、買収成立の可能性が0というわけではありません。というのも、ここ最近、司法省や公正取引委員会は大型買収を承認しており、大型買収には追い風が吹いています。これは現在の政権が保守党である側面が大きいと思います。保守党は独占禁止法の面で、大型買収などに寛容なポリシーを持っているので、大型買収が成立しやすいと言われています。

またスプリントの経営が思わしくないという点も考慮されると思います。スプリントが無くなれば携帯通信市場の競争に支障をきたすと判断され、尚且つT-MobileUSとの合併がなければ、スプリントの経営再建は難しいと判断されれば、買収が承認されるかもしれません。

 

と、今回は独占禁止法に焦点を当ててスプリントとT-Mobileの合併について書いてみました。気が向いたら両社の株価についても今後書いていきたいと思います。

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セルジーン投資家が抱える不確実要素(CVRの処理)

現在、セルジーンの投資家はブリストルマイヤーズとの買収が無事成立することをウキウキしながら待っているのではないでしょうか。というのも、セルジーン投資家は買収成立後には現金50ドルとブリストルマイヤーズ株1株、つまり98ドル相当(日々変動)の対価に加え、一定の条件が成立すれば9ドルを受け取ることが出来るオプション(CVR)を受け取ることが出来ますから。なので合計で107ドル相当の対価を期待しているセルジーン投資家が多いのではないでしょうか。

 

しかしカナリーの推測では、日本のネット証券を通じてセルジーン株を購入している方は、CVRの対価の9ドル満額を受け取るチャンスを自動的に失ってしまう可能性があると考えています。あくまでカナリーの推測ですが…。理由は次の通りです。

 

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セルジーンとブリストルマイヤーズはSECに提出した買収に関する書類の中でこう述べています。

 

ブリストルマイヤーズスクイブは、CVRをニューヨーク証券取引所へ上場させられるよう最大限努力する。

 

セルジーン提出のDEFM14A p.218 の一部を意訳

 

つまりCVRはNYSEに上場し、投資家たちによって取引される可能性が高いのです。CVRを上場させることは難しいことではなく、事実、セルジーンやサノフィが企業を買収した際に発行したCVRは現在もNYSEで取引されています。なので、今回のCVRも上場する可能性が非常に高いと思います。

 

上場となると、ネット証券のCVRの処理方法には次の3つの方法が考えられ、証券会社が最初の1つ目のパターンを処理方法として選択した場合、投資家は9ドル満額を受け取るチャンスを失います。

 

  1. 市場価格での処理

CVRが市場で取引された場合、日本のネット証券はCVRを市場価格で処理してしまうかもしれません。まあ合理的と言われれば合理的ですよね。

 

上場時点でCVRの条件が成立していない限り、CVRの価格は9ドル以下になるはずですから、日系の証券会社がCVRを市場価格で処理した場合、9ドルを受け取ることは出来ないわけです。

 

では市場価格がいくらになるか。これについては全く見当が付きません。CVRの条件である、3つの新薬の承認プロセスがどの程度進むかによって価格が大きく変わってくるからです。ただ、条件は全く異なりますが、サノフィのCVR価格の推移をみる限り、CVRで受け取れる現金の半値の価格で値付けされれば、良いほうかもしれません。つまり、あまり期待しないほうがいいということです。

 

  1. 0ドルか9ドルか。

2つ目のパターンは証券会社が途中でCVRを処理せずに、CVRの条件が成立すれば9ドル支払われ、CVRの条件が不成立に終われば対価なしとして処理されるパターンです。単純明快ですね。

 

ただ、ネット証券がこの処理方法を選択した場合でも、投資家たちは不利な立場に立たされます。というのも、例えば上場後から数ヶ月はCVRが3ドルで取引されていたけど、結局オプションの条件が成立せず、CVR自体の価値がなくなってしまうということも考えられるからです。つまり、3ドルで売れたはずのものが売れず、何も出来ぬまま腐らせてしまう可能性もあるわけです。

 

  1. CVRの取引に対応する。

これは投資家にとって、最も望ましい処理方法になります。ネット証券がCVRの取引に対応した場合、投資家はCVRを保持するか売却するかを選択できますし、CVRの一部を売って、残りを保有することも出来ますからね。

 

ただ、ネット証券がCVRの取引に対応する可能性は低いと思われます。というのも、もし容易に対応できるのならば、サノフィやセルジーンが発行したCVRが取り扱い銘柄として既に含まれていてもおかしくないからです。

 

まああまり期待するな。

どのようにCVRが処理されるかは、はっきりしていませんし、ネット証券によって処理方法が異なってくるかもしれません。ただ、処理方法がどうであれ、セルジーン投資家はCVRに過度な期待を寄せるべきではありません。そもそもCVRというのは買収側のリスク回避を目的として発行されるものなので、成立する確率が微妙な条件だからこそCVRの条件になっているという皮肉な側面があります。ですので、9ドル貰えたら超ラッキー、市場価格で売却されればオッケー、というスタンスで待つべきだと思います。

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金と金利の関係は不変ではない

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金利が上がれば金が下がり、金利が下がれば金が上がるということを最近よく聞きます。理屈としては、金には利息がつかないため、金利が上がってしまうと利息が付く現金の方が魅力的になり、一方で金利が下がればその反対になるということです。

 

しかし、この相関関係は常に同じというわけではなさそうです。カナリーが読んだ本には以下のように書かれています。

 

私がトレーディングを始めたときに頻繁に耳にしたことは、金利が高くなれば貴金属の価格が高くなるというものだった。

カプランのオプション売買戦略: 優位性を味方につけ市場に勝つ方法 より引用

 

本の著者であるカプランがオプショントレーダーになった頃は、

 

金利が高くなればインフレ懸念を誘発し、それが貴金属価格を上げ、逆に金利が下がれば、利益の出ない貴金属に投資する理由がない。

 

という現在とは正反対の理論が一般的だったそうです。これがいつ頃の話なのかは明確には分かりませんが、カプランはこの記述後に1978年のスイスフランと金価格の話を持ち出して色々説明しているので、その辺りの話かもしれません。

 

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さて、このカプランの記述は何を示唆しているでしょう。

 

それは、異なる金融商品間の相関関係は時代とともに変化するもので不変の方程式はないということ。実際にカプランも、時代とともにこのような異なる金融商品間の相関関係は変わっていくものなので、相関関係を使ってトレードする人は時代に即した考え方が必要だと述べています。

 

ただはっきり言ってカナリーは異なる金融商品間の相関関係というのはあって無いようなものだと考えています。結局のところ市場が偶然そう動くので後付けで理由が形成されてきたようなものではないかと。まあでも確かに、一般的に言われているように相関するんですよ。ただそれが将来も続いていくかと言われると決してそうではないと思うのです。なので、何か特別な関係(例えば同一企業が発行する株と転換社債の関係)や株とその株の発行体のビジネスに直接関わるモノとの関係(石油株と石油価格など)ではない限り、一般的に言われている相関関係について当てにすべきではないというのがカナリーの意見です。

 

このような考えから、異なる金融商品間の相関関係をさも不変の方程式のように断言したり、扱ったりし、経済や投資を語ったりするのは正しいことではないとカナリーは思います。

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手作り転換社債について考える

転換社債というのは社債に転換権がくっついているものですが、理論上は社債ワラントが組み合わさったものです。

 

最近カナリーは、社債と同企業のワラントを組み合わせて、自分で勝手に転換社債ポートフォリオを作ってしまうとどうなるのかということを考えています。

 

なぜこんなことを考えてしまったのか。

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この記事にも書きましたが、最近の成長企業というのはバランスシートが健全であるパターンがよくあります。例えばグーグルなんかはレバレッジが低いですし、利払いにもまだまだ余裕があります。ですから、グーグルなどの社債は投資適格といえるでしょう。S&PもダブルAを付けていますから、このような企業への債券投資は理に適っていると思います。しかし、このような成長企業に債権者として投資するのは何だか勿体無い気もするわけです。そこで、ワラントやオプションを同時に買ってしまい、転換社債のような形にして、企業の成長力の恩恵を受けながら債券投資をするのはどうかなと考えてみたわけです。

 

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  • カナリーが考えたメリット

  •  マーケットが急落した場合でも損失は比較的小さく済む。

 成長企業の株というのは割高で取引されていることが多いので、何かの拍子に急落することがよくあります。例えば昨年には、成長株の代名詞といえたNVIDIAが高値から5割近く暴落しましたし、Amazonなんかも30%から40%ほど下落しました。

 

しかし一方で、この2つの企業の社債はほぼ無傷だったので、債券投資家は損失をほとんど被らずに済んだのです。

 

もちろん、ワラントやオプションの価値は株価急落によって大きく傷ついたでしょうが、転換社債ポートフォリオ全体で考えた場合、社債に対するワラントまたはオプションの部分は小さいので、それほど大きい損失にはなっていないはずです。また、もしワラントやオプションが満期間際でアウトオブザマネーになった場合、オプションとワラントの価値はほぼ0になりますが、社債の利息収入以下の価格だったワラントやオプションを買った場合、ワラントの損失分をそれまでに受け取った社債金利収入で賄えるわけです。

 

 

しかし、しかし。このように社債ワラント(オプション)を組み合わせた転換社債ポートフォリオで投資をしている著名な投資家やファンドをカナリーは聞いたことがありません(笑)。誰もやっていないということはデメリットが大きいのかもしれません(笑)。カナリーが考えたデメリットは以下の通り。

 

  • カナリーが考えるデメリット

  • 転換社債に比べて投資効率が悪い。

 一般的な転換社債というのは、ワラント価値の分だけ金利が低く設定されています。つまり、受け取る利息はワラント分を差し引いたものになっているわけで、ワラントの価値を先払いする必要がありません。しかし、転換社債ポートフォリオの場合、ワラントを先に買い、後から債券の金利収入でワラントの購入分を補っていくことになります。普通の転換社債は、ワラントを買う必要がありませんが、転換社債ポートフォリオは先にワラントを買わなければならないので、ワラント購入分だけ投資効率が落ちます。

 

  • 結局どういうパフォーマンスになるのか良く分からない。

 結局こんなことをやっている人がいないので、パフォーマンスがどうなるのかよく分かりません。恐らく、転換社債ETFのパフォーマンスが理論的に最も近いのかもしれません。しかし、転換社債ETFに組み込まれている企業というのは、転換社債を発行して金利費用を抑えたい訳あり企業や二流企業が多く組み込まれていることもあります。今回、カナリーが考えた転換社債ポートフォリオは優良成長企業の社債ワラントを組み合わせることを前提にしているため、ETFとは異なったパフォーマンスになるのではないかと思います。

 

  • 権利行使価格までの上昇は捨てなければならない

これは普通の転換社債にも言えることですが、権利行使価格までの上昇分は全く利益になりません。例えば、現在の株価が100ドルで、ワラントの権利行使価格120ドルの場合、120ドルまでの上昇分は捨てなければなりません。これによって、権利行使価格に到達するまでは、マーケットが上昇局面において原資産の株式に対してはアンダーパフォームすることになります。なので結局、普通に株に投資しておけば良かったと後悔するかもしれません。

 

まだまだ思い付きの段階で色々調べているわけでもないのですが、恐らく転換社債ポートフォリオをつくるなら、バランスシートが良く、株価と業績が著しく成長しており、無配か配当利回りが極めて低い企業が適しているのではないかと、現時点では考えています。またどのようなオプションやワラントを選ぶのかも重要なポイントでしょう。まあただ、現在の低い金利水準なんかを考えれば、今やるべきことではないかなとも感じています。

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株価が100ドル超えたP&Gを分析!

最近、100ドル寸前でくすぶっていたP&Gですが100ドルを超えて高値を記録しました。株式分割調整後で最高値を更新しています。そんなP&Gを見ていきたいと思います。

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  •  売上・利益を分析

まずはオーソドックスな指標から。

 

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モーニングスターより引用

利益率は良くなっているのですが、最近はプライベートブランドの台頭などもあって、売り上げや利益を右肩上がりに成長させることが出来ていません。先日にクラフトハインツが暴落した際にバフェットがプライベートブランドの脅威について触れていましたが、P&Gにとっても他人ごとではなく、今後もプライベートブランドに押されていくような展開になるかもしれません。

 

P&Gに投資する米国株投資家の多くは、恐らく成長力について気にしていない方が多いと思います。しかし、アメリカでは低水準ながらインフレが続いていることを考えれば、物価上昇率を補う分だけは成長して欲しいところです。また増配を続けていくためにも、利益を上昇させる必要がありますから、投資家の方は成長力についても多少は注目する必要があります。

 

  •  ちょっと脱線

P&Gだけでなくアメリカの生活必需品企業(食品なども)全般に言えることですが、これらの企業は90年代からリーマンショック頃までは結構な勢いで成長していたんですよね。この記事にも書いたのですが、

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P&Gは10年前にはグロース株として扱われていました。

 

P&Gではありませんが、バフェットがコカ・コーラ株への長期投資を成功させた要因は、90年代後半のアメリカの4%台の高成長率が要因だと思います。なので、カナリーはP&Gやコカ・コーラといった安定した生活必需品株が成長するには国の成長率というのも大きなカギになるのではないかと考えており、今のアメリカや他の先進国の微妙な成長率の中で、P&Gを含む生活必需品企業に以前のような成長を期待するのは酷だと考えています。まあP&G投資家の中で成長力を求めている人は少数だと思いますが…。ただ、やはり長期投資を成功させるには、控えめであってもある程度の成長力が必要だとカナリーは考えています。なので、P&Gにはもう少しでいいから成長しろ、大人になれと言いたいところです。

 

  • なんだかんだでアウトパフォーム(直近1年)

 

現時点では高い成長率が期待できない一方で、P&Gのような安定企業の株が下落した時というのは、市場をアウトパフォームするチャンスではないかとも考えています。昨年にP&G株は下落しましたが、直近1年のパフォーマンスをみると結果的にはS&P500を大きくアウトパフォームしています。

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ゼネラルミルズのような食品株でも2,3年下落を続けていることを考えると、下落局面での買いは勇気がいりますが、P&Gが安定的に利益を生み出していることを考えれば、下落局面はやはり大きなチャンスになるのかと思います。

 

  • 将来の展望(個人的な考え)

カナリーの個人的な考えですが、売り上げや利益がここ数年のように上がらない状況が続けば、経営陣は企業買収を考え出すのではないかと思います。現状、生活必需品企業が以前のような成長力を取り戻すのは厳しいです。しかし、M&Aで有望な企業を買収してしまえば数字上の売上高や利益は手っ取り早く押し上げることが出来るので、企業買収は一つの手段だと思います。

 

一方で、買収という手段を選択した場合、買収する価格に気を付けないと減損する羽目になります。実際に以前P&Gが買収したジレットは減損寸前のところまで来ていますから、経営陣には適正な価格でM&Aを行って欲しいものです。因みにジレットの減損リスクについては以前の記事にて詳しく書いたので、気になる方は是非読んでみて下さい。

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スピンオフでの意思決定

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アメリカでは資本の効率性などを向上させる手段としてスピンオフが頻繁に行われます。日本では珍しいことでしょうからスピンオフが実際に起こった場合、スピンオフ株を売るのか、持ち続けるのか迷う人も多いのではないでしょうか。もちろん、その判断は投資家の状況や考え方によって異なるのは当然ですが、今回はその判断、意思決定をする上で判断材料となるポイントをいくつか挙げていきたいと思います。

 

  1. スピンオフ企業のビジネスが良いビジネスかどうか。

株を買ったり、売ったりする理由というのは投資家の考え方や戦略によって様々なのですが、日本で米国株に投資する人はバフェットのように「素晴らしい企業への投資」を主眼に置いている人が多いと思ったので、この点を第一に挙げました。

 

この部分については最終的に投資家である皆さんそれぞれの尺度で判断していただくことになるのですが、恐らく、判断材料をどこから持ってくるのか、またどのように分析すればよいか分からない人が多いのではないでしょうか。というのも、スピンオフ企業単独のアニュアルレポートはスピンオフ時にはありませんからね。モーニングスターがいち早く反映してくれれば楽なのですが、そうではない場合、企業がSECに提出する文書から判断する必要があります。

 

ただ、SECの文書に掲載されているのはスピンオフ企業単独の過去3年の業績のみであり、モーニングスターもこの文書に合わせて決算データを反映させるため、4年以上前の決算は良く分からないことが多いです。しかし、部門が丸ごとスピンオフする場合、本体企業の過去のアニュアルレポートに部門別の売上高と利益が記載されているので、これを利用してスピンオフ企業の過去の長期的な売り上げと利益推移、利益率を見積もることは可能です。

 

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  1. 現経営陣が残るのか、動くのか。

小さい部門や子会社をスピンオフする場合、経営陣がスピンオフ先に移動することは無いと思いますが、会社をまっ二つにするようなスピンオフの場合、経営陣がスピンオフ先に移動することがあります。もし、現経営陣がスピンオフ企業に移動した場合、スピンオフした企業の方が、本体側に比べて有望である可能性があります。

 

基本的に経営陣というのは、よっぽど残念な人でない限りその企業のビジネスについて熟知しているはずです。そのため、近い将来スピンオフによって分裂する2社のどちらがより良いビジネスかを理解している可能性があります。そしてもし、スピンオフ企業の方が良いと考えれば、自ら選択肢を持つ彼らが、経営者として成功を収めるためにスピンオフ企業を選ぶのは自然なことではないでしょうか。

 

  1. 債務スピンオフではないか。

スピンオフというのは、ある部門と本体それぞれの経営効率を向上させるために実行されることが多いのですが、たまに別の目的で行われる場合があるため、投資家は注意深くその目的を探らなければなりません。特に注意すべきは債務スピンオフです。債務スピンオフというのはカナリーが勝手に名付けています。これは、スピンオフ企業に本体企業が持つ債務を背負わせ、債務と共にそのスピンオフ企業を切り離してしまうことを指します。こうすることで、本体企業は債務を減らすことが出来てしまうわけです。スピンオフ企業の社員にとっては最悪ですが…。このようなスピンオフの場合、要注意というか、スピンオフ企業のビジネスも大して魅力的ではないので特別な理由がない限り売却してしまった方が無難だと思います。

 

今回はスピンオフ時の判断材料となるポイントを見てきました。まあ最終的には投資家である皆さんがスピンオフ株を売りたいか、持ち続けたいかを判断するのですが、その判断を助けるためのポイントを紹介してみました。

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