カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

ユナイテッド・テクノロジーズはちょっと割安かもしれない。

 

先日、ユナイテッド・テクノロジーズは、分社後に航空機部門とレイセオンを合併させると発表しましたね。まあ、大企業同士の合併なので、独禁法の問題もあるでしょうし、防衛関連セクターなので、様々な機関の審査が必要になってきます。特に中国当局の審査が必要になった場合、審査が長引いたりすることが考えられます。なので、合併が成立するかは不透明ですが、もし、無事に合併が成立すると仮定した場合、ユナイテッド・テクノロジーズの株は少し割安なのではないかと思っています。計算や考え方が間違っていなければ(笑)。ちょっと長いですが、今回はその理由を書いていきます。

 

 

と、本題に入る前に、ユナイテッドテクノロジーズが今後何をするのか知らない人もいると思うので、簡単に書きたいと思います。ユナイテッドテクノロジーズはまず、会社を航空機事業とエレベーター事業のオーチス、そしてビル空調設備事業をそれぞれに分社します。その後、航空機部門はレイセオンと合併する予定です。

 

 

 

今回のレイセオンとの合併発表では、ユナイテッド・テクノロジーズ分社後の3つの会社の株価がどのくらいになるか、ヒントを与えてくれているとカナリーは考えています。では何がヒントとなり、そこからどのようなことが分かるのでしょうか。

 

ヒント1. 航空機部門の新会社とレイセオン1株の交換比率は2.3348である。

 

このヒントにより、航空機部門の新会社の株価がおよそ、75.95ドル前後になると考えられます。というのもレイセオンの株価が177ドルなので(6月14日の終値)、そこから交換比率2.3348を割ると75.9ドルになるからです。もちろんこの新会社の予測株価はレイセオンの株価変動によって変化しますが…。

 

ヒント2. 航空機部門の新会社の株主構成比率は、レイセオン株主43%、ユナイテッドテクノロジーズ57%となる。

 

このヒントによって、新会社の株式数が約1519百万株になることが分かります(式はレイセオンの発行済み株式数×2.3348÷43%)。そうするとユナイテッドテクノロジーズの株主が持つ新会社の株式数は約866百万と考えられます。

さて、ユナイテッド・テクノロジーズの現在の発行済み株式数は862百万と、先ほど導いた866百万と近しい数字です。ということは、分社の際、ユナイテッド・テクノロジーズ株主は1株当たり、航空機部門の新会社の株式を1株ほど受け取ることになるのではないかと、ざっくり見積もることができます。

 

 

ユナイテッドテクノロジーズの株価は125.30ドル(6月14日終値)です。この株価には、航空機事業、エレベーター事業とビル設備事業の市場評価が反映されています。

 

今までは、これらの事業それぞれにどのくらいの株価が付くのか分からなかったわけですが、レイセオンとの合併発表によって、予測することができます。まず、先ほども述べた通り、航空機事業には75.9ドル辺りの値がつくことが考えられます(現在のレイセオンの株価から考えて)。そして、残りの2つの事業には125.30(UTXの現在の株価)から75.9ドルを差し引いた49.34ドルの値が付きそうだと予測することが出来ます(エレベーター事業とビル設備事業の2つの事業合わせて)。つまり125.30という現在の株価の約60%が航空機事業で構成され、残りの40%はエレベーター事業と空調設備事業の時価評価と考えることができるわけです。

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  • ちょっとおかしい株価とセグメント別営業利益の関係

 

しかし、ユナイテッド・テクノロジーズのセグメント別の営業利益を見てみると、エレベーター事業とビル設備事業が全体の営業利益の6割を占めており、航空機事業は約4割ほどしか占めておりません。

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utc annual report 2018 より

 

 つまり、下の図の通り、セグメント別に対する市場評価と実際のセグメント別の営業利益がミスマッチで、ユナイテッド・テクノロジーズの株価は少し不合理ではないかとカナリーは考えているわけです。

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もちろん、それだけ航空機事業への期待値が高く、エレベーター事業とビル設備事業への期待値は低いということかもしれません。しかし、エレベーター事業とビル設備事業がそこまで悪いビジネスかというとそうでもありません。以下が過去3年の業績です。

 

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UTC annual report 2018


まあ、とびきり良いとも思いませんが…。

 

ただ、もしエレベーター事業とビル設備事業を合わせた株価が49.34ドルだとすると、エレベーター事業とビル設備事業の営業利益に対する株価倍率はたったの7倍で、仮に法人税率が30%程だと考えた場合、PERは10倍となります。これは少し割安ではないかと思っています。というのも例えば、エレベーター事業で同業のシンドラーエレベータの株価はPER24倍で売られているからです。もちろん、同業だから常にPERの水準が同じというわけではありませんが、PER10倍と24倍というのは開きが大きいように感じます。

 

つまり何が言いたいかというと、航空機事業に対する株式市場の評価は妥当かもしれないが、他の2つの事業に対する評価が低いのではないか。もしそうであれば分社後に受け取った3事業の株式によって利益を得られるのではないか。

 

と言いたいわけです。

 

現在、効率的市場仮説が金融市場において一般的な考え方ですが、スピンオフや分社といったコーポレートアクションが起こる時、株式市場は過ちを犯し、割安な値段を付けることがよくあると言われています。ですので、ひょっとしたら、今回の分社イベントは投資家にとってチャンスになるかもしれません。といっても現時点でカナリーはあまり自信がありません(笑)。というのも、この話は推測によって成り立っているからです。もう少し考えてみたいと思います。

 

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