スピンオフでの意思決定
アメリカでは資本の効率性などを向上させる手段としてスピンオフが頻繁に行われます。日本では珍しいことでしょうからスピンオフが実際に起こった場合、スピンオフ株を売るのか、持ち続けるのか迷う人も多いのではないでしょうか。もちろん、その判断は投資家の状況や考え方によって異なるのは当然ですが、今回はその判断、意思決定をする上で判断材料となるポイントをいくつか挙げていきたいと思います。
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スピンオフ企業のビジネスが良いビジネスかどうか。
株を買ったり、売ったりする理由というのは投資家の考え方や戦略によって様々なのですが、日本で米国株に投資する人はバフェットのように「素晴らしい企業への投資」を主眼に置いている人が多いと思ったので、この点を第一に挙げました。
この部分については最終的に投資家である皆さんそれぞれの尺度で判断していただくことになるのですが、恐らく、判断材料をどこから持ってくるのか、またどのように分析すればよいか分からない人が多いのではないでしょうか。というのも、スピンオフ企業単独のアニュアルレポートはスピンオフ時にはありませんからね。モーニングスターがいち早く反映してくれれば楽なのですが、そうではない場合、企業がSECに提出する文書から判断する必要があります。
ただ、SECの文書に掲載されているのはスピンオフ企業単独の過去3年の業績のみであり、モーニングスターもこの文書に合わせて決算データを反映させるため、4年以上前の決算は良く分からないことが多いです。しかし、部門が丸ごとスピンオフする場合、本体企業の過去のアニュアルレポートに部門別の売上高と利益が記載されているので、これを利用してスピンオフ企業の過去の長期的な売り上げと利益推移、利益率を見積もることは可能です。
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現経営陣が残るのか、動くのか。
小さい部門や子会社をスピンオフする場合、経営陣がスピンオフ先に移動することは無いと思いますが、会社をまっ二つにするようなスピンオフの場合、経営陣がスピンオフ先に移動することがあります。もし、現経営陣がスピンオフ企業に移動した場合、スピンオフした企業の方が、本体側に比べて有望である可能性があります。
基本的に経営陣というのは、よっぽど残念な人でない限りその企業のビジネスについて熟知しているはずです。そのため、近い将来スピンオフによって分裂する2社のどちらがより良いビジネスかを理解している可能性があります。そしてもし、スピンオフ企業の方が良いと考えれば、自ら選択肢を持つ彼らが、経営者として成功を収めるためにスピンオフ企業を選ぶのは自然なことではないでしょうか。
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債務スピンオフではないか。
スピンオフというのは、ある部門と本体それぞれの経営効率を向上させるために実行されることが多いのですが、たまに別の目的で行われる場合があるため、投資家は注意深くその目的を探らなければなりません。特に注意すべきは債務スピンオフです。債務スピンオフというのはカナリーが勝手に名付けています。これは、スピンオフ企業に本体企業が持つ債務を背負わせ、債務と共にそのスピンオフ企業を切り離してしまうことを指します。こうすることで、本体企業は債務を減らすことが出来てしまうわけです。スピンオフ企業の社員にとっては最悪ですが…。このようなスピンオフの場合、要注意というか、スピンオフ企業のビジネスも大して魅力的ではないので特別な理由がない限り売却してしまった方が無難だと思います。
今回はスピンオフ時の判断材料となるポイントを見てきました。まあ最終的には投資家である皆さんがスピンオフ株を売りたいか、持ち続けたいかを判断するのですが、その判断を助けるためのポイントを紹介してみました。
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