カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

バフェットのレッドハット株購入の理由を成長性と断言する人は完全にどうかしている

バフェットは常々、「素晴らしい会社に投資する」と発言し、実際に利益率などが高い企業に投資し利益を得ています。しかし、今回のレッドハット株への投資は「素晴らしい企業への投資」とは全く別の戦略である可能性があります。それにもかかわらず、「バフェットがレッドハット株を購入した理由は成長性やクラウド市場の有望性」などと断言している人やブロガーは自分が何も考えていないことを自分自身で示唆しています。

 

現時点では、バフェットがレッドハット株を購入した理由は次に示す2つのうちどちらかと考えられ、どちらの理由で購入したかはバフェット自身が今後発言するか、レッドハット株を購入した日付が明らかにならない限り断言できません。もちろん全く別の理由の可能性もありますが…。

 

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  •  考えられる理由と思惑

バフェットがレッドハット株を購入した理由は次のうちどちらかの可能性が高いでしょう。

 

従来通り、レッドハット株が素晴らしい企業と思って購入した(ブロガーなどが言う通り)。

 

裁定取引を狙って購入した。

 

この2つのどちらかだと思われます。ただ、どちらの理由なのかというのは購入した日付が明らかにならないと分かりません。つまり断言出来ないわけです。

 

  • 分岐点の昨年10月28日

昨年の10月28日。それはIBMRedHatの買収を発表した日です。もし、これ以前に買った場合、バフェットはレッドハットの成長性や、何かに魅力を感じ買ったのでしょう。インサイダー取引でなければ。ただバフェットがインサイダーに関わることはあり得ないでしょうし、今更そのようなことをする理由もないはずです。

一方でもし、10月28日の買収発表後に買っていた場合、裁定取引を狙った購入である可能性が高いです。レッドハットの裁定取引は以前の記事で書いたので、興味がある方は読んでいただけたらと思います。今の状況とは異なる部分もありますが…。

 

www.canary-w.com

10月28日以降に購入したならば、株価と買収価格の190ドルの差を狙ったものであり、「レッドハットの成長性」は投資の意思決定において一切関係ありません。10月28日以降のレッドハット株価は、買収が成立する確率と、買収成立までの時間を織り込んで小刻みな変動を繰り返しながら190ドルに近づいているからです。まあそもそも、買収価格が1株190ドルなのでレッドハット株が190ドル以上に成長することはないですから、成長性などなにもないわけです。

 

ずっと言っていますが、結局購入日が分からないので、「バイホールド」を目的としたのか「裁定取引」を狙ったものなのか分かりません。しかしカナリーは裁定取引の可能性が高いのではと推測しています。というのも、もし10月28日以前にバイホールドを目的に買ったのなら、50%の利益を数週間で手にしていることになり(4Qは10月1日からなので)、たった10%の裁定利益のために、いつになるか分からない買収成立を待つより、手仕舞って他の株に乗り換えたほうが良いのではと考えるからです。上昇余地はIBMが提示した190ドルまでしかありませんし。しかし、バフェットは12月31日時点でレッドハット株を保有しています。ということは買収成立に賭けた裁定取引の可能性が高いのではないかと推測しています。

 

  • バフェットの真似をしようとした人への忠告

もし、「レッドハットは成長性もあるし、バフェットが買ったから自分もバイホールドで買おう!」と思ったのなら、それは非常に愚かなことで、投資判断を完全に誤っています。もし、バフェットがレッドハットの成長性などに魅力を感じバイホールドしたのなら、バフェットは10月28日以前に120ドル前後で買っている可能性が高いです。しかし、今レッドハットの株価は180ドルほどになっており、IBMによる買収発表からおよそ50%値上がりしていますから、状況が全く異なるわけで、今更買っても遅いわけです。

 

また上記の通り、10月28日以降にバフェットがレッドハット株を購入しているのなら、バフェットはバイホールドではなく、裁定取引を目的としているはずですので、成長性に魅力を感じているあなたと、裁定取引を狙っているバフェットとは見ている景色が全く異なっています。そして、勘違いのバイホール投資家は10%未満の上昇余地しかないのに「成長性」を期待してレッドハット株を買っているわけですから、ピントがずれていることになります。

 

つまり何が言いたいかというと、買収不成立にならない限りは、レッドハット株はアービトラージャーIBM買収発表前から株を持っていた投資家のためのフィールドであり、新規のバイホールド投資家が今更上がる土俵ではありません。もしレッドハットの成長性に魅力を感じているのなら、買収成立を信じてIBM株を買うのが正しい判断だとカナリーは思います。

 

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減配の要因 利払いと買収

米国の高配当株に投資し、配当を再投資する戦略を採用している米国株投資家は多いと思います。今回はそういった方たちにとってネガティブな話、「減配」について書こうかなと思います。

 

今回は高配当株として扱われていた企業が、売り上げや利益をそれなりに出しているのに減配した例を挙げ、企業が減配する要因を探っていきたいと思います。

 

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  • アンハイザーブッシュ(利払いと債務が大きくなってしまって減配)

 アンハイザーブッシュはバドワイザーといったビールを製造している企業です。みなさんもご存知だと思います。昨年この企業は配当を減らす方針を発表しました。経営陣が減配を決めた理由は債務と利払いです。アンハイザーはここ2016年から、債務と利払いが急増し、インタレスカバレッジが低くなっていました。

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売上と営業利益をみれば、業績は安定していますが、利払いが増えてくれば純利益は当然のことながら圧縮されていきます。そして放っておけば売り上げは出ているけど雪だるまのように増えた利息を払うことができずに会社が危機的状態になるということも考えられます。では、どうやって膨らんだ債務と利払いを減らすか。今は金利が低いので、利払いが少なく済む債券を発行し、金利が高い古い債券から利払いの少ない債券に移行するというのも経営陣にとっては選択肢の一つかもしれません。ただ債務は増えますが。なのでやっぱり一番効果的なのは、単純に純資産を積み増すことでしょう。でもアンハイザーはここ2,3年において利益のほとんどを配当に回していましたから、じゃあ減配するしかないということで、減配したのだと思います。

 

高配当投資家の方はそのセクターやビジネスを判断基準として、安定したキャッシュフローや利益、継続的な増配を見込めるか判断しているようにみえます。もちろんこのような判断基準は大事ですが、カナリーとしては安定して配当を続けるためには、利払いと利益の間に十分なマージンが必要で、このマージンも安定した配当の要因になると考えています。

 今度はファイザーの減配例を見ていきます。2006年、2007年、ファイザー株は3-4%ほどの配当利回りを保っており、2009年まで増配を続けていましたから、リーマンショック前の時点では高配当株投資家にとっては魅力的な銘柄の一つだったと思います。しかし2009年にファイザーは配当を減額しました。その理由はワイズ社を買収する資金を捻出するためです。このように企業買収のお金を捻出するために、配当を減額するというパターンもあります。

 

因みに2009年のニューヨークタイムズの記事ではファイザーが信用格付けを気にしたため、買収資金を全て借り入れで賄うのではなく、減配で捻出したと書かれています。この時は深刻な不景気に見舞われていましたから、恐らく経営陣は信用格付けの格下げや、債務が増えることを恐れて減配という判断に至ったのだとカナリーは推測しています。またこれもカナリーの推測にすぎませんが、銀行団が思い切って買収資金のための貸し付けが出来なかったことも減配に至った理由の一つではないかとも考えています。この買収案件の融資に参加した銀行団はゴールドマン、シティ、JPモルガン、バンカメでした。シティやバンカメは当時、三途の川を渡りかけましたし、他の2行も無傷ではありませんでしたから、大きな金額を融資するほど元気がなかったと思います。またNYタイムズの記事によると、この銀行団は、公的資金の注入を受けながら買収案件に融資することについて批判を受けていたそうです。これも大規模に融資ができなかった要因かもしれません。カナリーはこうした銀行側の事情なども踏まえ、総合的に考えた結果、ファイザーの経営陣は減配という決断に至ったのではないかと、勝手に思っています。

 

カナリーの憶測が当たっているかは知りませんが、まあとにかく、投資家がいくら分析しようとも、「買収」といった投資家にとって予測不能なイベントによって配当が減額してしまうこともあるわけです。最近の例でいうと、減配ではありませんが、IBMはレッドハット買収後の債務が増えないように自社株買いを当分停止すると発表しています。このように経営陣が企業買収時に債務が増えることを嫌った場合、過去の業績が悪くなくても、利益率が良かろうとも、配当や自社株買いといった株主還元が減る可能性は十分あり得る話だとカナリーは思います。また、アメリカの銀行は不景気時にM&Aの融資から手を引くことがよくあります。この場合、大体のM&Aは破談になるのですが、もし経営陣が融資なしでもM&Aを実行したいと考えれば、減配して資金を捻出するということも考えられると思います(銀行の話はちょっと飛躍している感もありますが)。

 

ちょっと長く書きました。高配当株投資家にとっては嫌な話だったかもしれませんが、高配当株投資家だからこそネガティブなことについても考えていただけたらなと思います。

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テスラの珍しい買収手口

先日テスラはマクスウェル・テクノロジーという企業の買収を発表しました。大体2.3億ドル規模の買収案件となるそうです。

 

さて、ここから少しマニアックな話になりますが、テスラはマクスウェル・テクノロジーを珍しい手法で買収しようとしています。何が珍しいかというとマクスウェル・テクノロジー株主への条件です。条件は以下の通りです。

 

マクスウェル・テクノロジー株主は買収の対価として4.75ドルを株式交換で受け取る。

 

さて、少し変ではないでしょうか。普通、被買収株主への対価が「いくら」と決まっている場合、現金との交換になります。また株式交換の場合は、交換する株式の「比率」が予め決まっています。しかし今回のテスラの場合、株式交換であるのに「いくら」と決まっており、アメリカでも非常に珍しい買収手法をとっています。マクスウェル・テクノロジー株主が受け取るテスラ株の比率は以下の式で決められます。

 

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 つまり、対価の「価格」が予め決められ、交換比率がテスラの株価に応じて調整されるようになります。因みにカナリーの推測ですが上の式内の「オファー期限」というのは恐らく、TOBのようにマクスウェル・テクノロジー株主が株をテスラに応募出来る期限が今後設定され、その期限日のことを指すのだと考えています。ただTOB方式で株式交換をするというのも珍しいことで、実はカナリーもこの点はちょっと自信がありません。すみません…。

 

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さて、実はこの買収手法は買収する側にリスクがあります。その名も「売りスパイラルリスク」(カナリーが勝手に名付けています)です。どういうことか。上の式について少し考えて頂けると分かると思いますが、マクスウェル・テクノロジー株に対するテスラ株の交換比率は買収完了直前のテスラ株の株価によって決まり、テスラの株価が上がれば交換比率は低くなります。しかし一方で、株価が下がれば交換比率は高くなりますから、その分だけ新しく発行される株数が増えることになります。つまり、一度何かの拍子に株価が下がり始めると…、

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このような「売りのスパイラル」に陥る可能性があるわけです。ただ、テスラは一応このことを頭に入れて条項を付け加えており、テスラの株価が245.90ドル以下になった場合、交換比率は0.0193と固定されます。ですからこの交換比率以上に新株が増えることはありません。また、テスラと比較するとマクスウェル・テクノロジーは小さい会社で、そもそもの交換比率が小さいですから、テスラ株の「売りスパイラル」のリスクはほぼ無いでしょう。

 

正直、こんな珍しいことを書いても、読者の役に立たないだろうなとも思いましたが、まあ書いてみたかったので…。まあ「こんなこともあるんだな」程度に受け取ってもらえればと思います。

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米国株投資家に喧嘩を売る記事

カナリーが若干イラっときた記事があったので紹介したいと思います。こちら。

 

www.mag2.com

 

記事の執筆者は大型米国株に投資し、利益を得る時代は終わったと言っています。まあ未来のことは分かりませんが、ここ数週間で米国株が盛り返してきていることを考えれば、このような主張は時期尚早ではないかと思います。なんかアップルは自社株買いで買った自社株で含み損を抱えているからオワコンみたいなことを言っていますが、そんなこと言ったら過去に自社株買い中心で株主還元してきた企業、アメックスなどはとっくに死んでいると思いますけどね。まあ調べてないので反論のための具体的な数値は出せませんが…。

 

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・このような記事にみえる典型パターン(GPIFの話に移っていきます)

 まあ恐らく読み手の感情を掻き立て不安を煽るのが、このような記事の目的でしょう。まあその手の記事にイラっとし、ブログを書いているカナリーも術中にはまっているわけですが…。大手新聞社もそうなのですが、このような投資での損失を記事にする際、大体の記事では損失額を大々的に取り上げ、損失率を一切書きません。この記事もそうです。14兆円という莫大な数字を読み手の頭に焼きつけるように書き、感情を掻き立てています。しかし、GPIFの運用額は150兆円とそもそも大きいので、株価などがちょっとでも変動すれば、変動する金額は大きくなってしまうものです。GPIFは昨年の第二四半期終了時点で約170兆円もっており、そこから約14兆円損失を出したのなら損失率は10%ほどでしょう。この数字は株式市場が15%以上下落していると考えれば最悪な運用成績とは言えないはずです(まあ債券が多い割には残念という感覚もありますが…。)。ただ、日本のほとんどの人は投資についてよく知らないので、14兆円という莫大な金額に気を取られ、GPIFが最悪な投資をしていると誤解してしまいます。

 

・GPIFもかわいそう

 カナリーはプロのファンドマネージャーでもなんでもないので、このような機関がどのように投資の意思決定をしているのか詳しくは知りません。もしかしたら、プロの目からすると他にやりようがあるのかもしれません。ただ、カナリーの目からすると、-10%ほどの損失で色々言われてしまう、GPIFもかわいそうだなという気がします。運用戦略を色々言う人もいるでしょうし、この執筆者はFXが良いとか言いたいのかもしれません。しかしこの年金運用機関は莫大なお金を運用し、運用額は断トツで世界一です。運用額が大きすぎると、結局大型株や流動性の高い債券に投資せざるを得ませんし、アクティビファンドのように機動的にお金を動かすことが出来ません。兆単位のお金を機動的かつ自由に動かすことは難しいでしょうから。例え小型株に投資したり、アクティブにお金を動かしても、それらがポートフォリオ内で大きな比率を占めることは出来ませんから、パフォーマンスへの影響は微々たるものでしょう。つまり何が言いたいかというと、運用額が大きすぎるので、月並みのパフォーマンスに終始してしまうのは仕方がないですし、それをGPIFの運用責任者たちのせいにするのは如何なものかと思うわけです。むしろ、批判するのなら運用戦略ではなく、GPIFという一つの運用機関にお金が集中して資産運用されていることを批判すべきであり、この問題はGPIFの責任というよりは、むしろ政治の責任ではないかなとカナリーは考えています。

 

なんか米国株の話からGPIFの話になってしまい、タイトルと内容がかけ離れていってしまいました。すみません。

 

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ヘッジファンドやアクティビティストは友達 in US

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ヘッジファンドやアクティビティストと聞くと、常に利益に向かって走り、利益のためならどんなことでも躊躇なく実行する、このようなイメージを持っている方も多いと思います。特に日本ですと、個人投資家とは敵対する立場に立っており、個人投資家を負かして利益を取っていく、そういう印象を持っている人も多いのではないでしょうか。まあ確かにそういうときもあるでしょうが、アメリカではヘッジファンドやアクティビストは時に個人投資家の味方になってくれることがあります。

 

例えば、アクティビストは経営陣と交渉し特別配当や自社株買いを引き出してくれることもあります。またアクティビストやヘッジファンド個人投資家にとって最も役に立つのは企業買収などのコーポレートアクションの時です。今回は企業買収の時などにヘッジファンドやアクティビストが個人投資家の役に立った具体例を紹介したいと思います。

 

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デルの新規上場時の例

 

昨年のデルの新規上場の件は、スペシャルシチュエーションとして何度か書かせていただきましたが、よく知らない方も多いと思うのでことの経緯をもう一度簡単に書きます。

 

デルは昨年末まで未上場企業でしたが、代わりに子会社であるVMwareの業績に連動させるトラッキングストック(ティッカー;DVMT)というものを発行し、市場で流通させていました。しかし、デルは昨年、デル自らが上場する方針を固めます。ただ、デル自身が上場するためには、DVMTを上場廃止にしなければなりませんでした。そこでデルは新規上場する自社株と現金を組み合わせたトータル109ドルのパッケージと、DVMT株を交換する提案をDVMT株主に示し、交換した自社株をそのまま上場させることにしました。

 

さてこのような経緯でデルは新規上場に向けて動いていったわけですが、ここで現れたのが有名なカール・アイカーンなどを筆頭とするヘッジファンド勢です。彼らは109ドルという対価はDVMT株主にとっては安いと言い始めました。さらに「109ドルのパッケージに含まれるDELL株はまだ未上場株であり、新規上場時に幾らになるか不明なので、値段が確実に分かる現金の割合を多くしろ!」と主張しました。デルとヘッジファンド勢は当初、歩み寄りませんでしたが、数ヶ月の交渉の結果、最終的にデルは交換パッケージを109ドルから120ドルに引き上げ、パッケージ内の現金の割合も増やすことにしました。つまりヘッジファンド勢が勝ったわけです。当然、個人投資家も109ドルではなく、120ドルのパッケージを受け取れましたから、ヘッジファンド個人投資家にも恩恵をもたらしたことになります。

 

ゼロックス富士フィルムの件も、ヘッジファンド個人投資家を守ってくれた例だとカナリーは思っています。確かにゼロックスの先行きは明るいものではありませんが、キャッシュフローと営業利益を毎年それなりに生み出している企業に対し、買収側が一銭も払わないというのは失礼な話です。もっとダメな企業にでさえ値段が付き、買収されることもあるのですから。もしアイカーンなどが来なければ、ゼロックス株主は特別配当を受け取れたでしょうが、それはゼロックスから支給されるもので、株主にとっては±ゼロみたいなものです。おまけに第三者割当で株が希釈化されたわけですから、ゼロックス株の価値は大きく損なわれたことでしょう。アイカーンは良い仕事をしたと個人的に思っています。ちょっと話は逸れますが、この買収方法を「画期的なスキーム」と言っている会長がいましたが、この発言から如何に日本の経営者が株主のことを考えていないかみてとれます。

 

このようにヘッジファンドやアクティビストは個人投資家の味方になってくれる例はアメリカでは多いと思います。確かにアクティビストなどは、ごねて、経営陣を揺さぶり、大きい対価を引き出すためだけに株を買い占めるパターンが多いので、長期投資家の方は良く思わないかもしれません。また、必ずしも個人投資家の味方というわけでもありません。ただ個人投資家にメリットをもたらすこともよくあるので、彼らを毛嫌いしないであげてください。

 

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GE GE株保有者は面倒なことになるかもしれない (鉄道部門がスピンオフ)

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ゼネラルエレクトリックは2019年の2月25日までに鉄道部門をスピンオフする予定であると発表しました。GEは前々から鉄道とヘルスケア部門をスピンオフさせたいと言ってきましたが、先に鉄道部門のスピンオフが決定しました。(SECにファイルされた公式文はこちら)

 

ただ今回のスピンオフは典型的なスピンオフとは異なります。スキームとしては鉄道部門をスピンオフさせて、同時にWabtec(ティッカー;WAB)という鉄道車両などを製造する会社と合併させる形をとります。恐らく合併後の新しい企業の名前はWabtecを引き継ぐため、GE株主は対価として合併後のWabtec株を受け取ることが出来ます。大体スピンオフというのは「1つの部門を新たな企業として独り立ちさせる」形式が典型的なものなので、今回のスピンオフは典型例とは少々異なりますが、いずれにせよGE本体から鉄道部門はなくなります。

 

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  • 面倒なこと

GEは現時点でWabtec株の割当比率を公表していませんがロイターによると0.005403が予測されている割当比率だそうです。(追記; 公式文にも予測割当比率が0.005403株であることが書かれていました。)

 

 

さて、この割当比率は今回のスピンオフがGE株保有者にとって少し面倒なことになることを示唆しています。どういうことか。この0.005403株という数字をもとに計算するとGE株を186株以上持っている投資家はWabtec株を一株以上受け取ることが出来ます。しかし、このWabtec株、現在の株価は72ドル台です。つまりあなたが、GE株を186株(およそ1860ドルの時価)保有しており、付与されたWabtec株を売却したい場合、あなたはたった72ドルのWabtec株を、5ドルの手数料を支払って売却しなければならないので、無駄な手数料を支払うことになります。例えGEを1000株保有していても、付与されるWabtec株はたった5株で、5株合わせた時価、およそ370ドルに5ドルの手数料を支払わなければならないことになります。つまりWabtec株を買い増そうと考えたり、少ない株数で保有し続ける方針でない限り、超無駄な手数料がかかると思われます。

 

ただ、証券会社によってはWabtec株の取り扱いがなく、新規取り扱いの予定もない場合、付与されるWabtec株と同等の現金付与になり、手数料がかからないかもしれません。SBI証券はWabtec株の取り扱いがないので、新規取り扱いにならない限り現金付与になるかもしれません。一方でマネックス楽天証券で売買している投資家の方は残念ですが、Wabtec株の取り扱いがあるのでスピンオフ時にWabtec株が付与され、売却のためには手数料を支払わなければならない可能性が高いと思います。どちらにしてもGE保有者の方はスピンオフが正式に決まり次第、証券会社に問い合わせることを強くお勧めします。

 

  • WabtecとGE鉄道部門をみてみる

上記の通り、Wabtec株が付与され、それを売却したい場合には無駄な手数料がかかる可能性があります。では売却するのを避けWabtec株を保有する価値があるのか?それは以下に示したGEの鉄道部門とWabtecの業績でご判断いただければと思います。

 

因みにWabtecは元々ウエスチングハウスの鉄道部門だったそうです。業績などは以下の通り。

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悪くはないけど…。みたいなところでしょうか。

 

では、GEの鉄道部門はどうでしょうか。

 

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カナリーは利益率がもっと低いのかと思っていましたが、そこそこの水準にあるようです。ただご覧の通り売上高、利益ともにここ3年間で減少していますね。

 

そしてWabtecと単純に足し合わせるとこんな感じになります。

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なんとも言えないというところがカナリーの率直な感想ですが、Wabtecよりも魅力に感じている企業があるのだとすれば、付与されたWabtec株を割高な手数料支払ってでも売り、魅力的な企業の株を買うための足しにしたほうが良いかと思います。

 

因みにスピンオフ株の権利落ち日は2019年2月14日のバレンタインデーです。この日をまたいでGE株を保有した場合、スピンオフ株を受け取ります。

 

因みにGEはヘルスケア部門もスピンオフを予定しています。GE投資家の方はぜひこちらも読んでみて下さい。

www.canary-w.com

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オルタナティブETFはどうなのか

オルタナティブは英語表記で”Alternative”で「代替の」とか「代わりの」といった意味があります。金融では伝統的な株式や債券を購入する運用ではなく、様々な戦略や金融商品を用いて投資することを指します。

 

さて、日系証券でオルタナティブETFの取り扱いはあまりないと思いますが、サクソバンクやIB証券では取り扱われています。カナリーはサクソバンクが特定口座に対応すれば、口座開設する人が増え、多くの人が今まで手に入らなかった金融商品を購入できるようになるのではと勝手に予測していますので、今回はアメリカのオルタナティブETFをみていきたいと思います。ETFdb.comによればオルタナティブETFと位置付けられるのは35本あるようです。今回はその中から、資産額が大きいものを2つ見ていきましょう。

 

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まずは

 

IQ ヘッジ・マルチストラテジートラッカーETF (ティッカー; QAI)

 

年間手数料; 0.79%

投資戦略;

ロングショートグローバルマクロ、マーケットニュートラルなどヘッジファンドが活用する様々な戦略

 

ETFdb.comによれば、オルタナティブETFの中で最も資産額が大きいETFがこのIQ ヘッジ・マルチストラテジートラッカーETFです。IQ ヘッジ・マルチストラテジー指数に連動するように作られています。ニューヨークライフという生命保険会社の投資部門が手掛ける商品です。ETF価格の推移はこんな感じ。

 

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S&P500と比較すると物足りないものになっています。昨年の成績は-3%ほどとダウ平均などと遜色がなく、しかもショートポジションも取っているはずなのにマイナスというのは、ちょっとなあと思います。ただこのETFはあくまで指数トラッカーなので、この残念な成績の責任はETFではなくヘッジファンド界全体にあるわけですが。現在の主なポートフォリオは以下の通り。

 

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現在は短期債(ETF)がポートフォリオの22%を占めています(T-billを含めればもっと)。もし今年中の利上げがなければ、そこそこの利回りを得られる短期債はおいしいと思っているファンドが多いのでしょうか。ただ単純に、短期債の比率が恒常的に高いということも考えられます。まあ過去のポートフォリオをみればわかりますが。短期債の他にも中期の社債やT-billなどが多く含まれており、債券系の比率が高いです。もし債券比率が高い状況が現在だけではなく常に続いている状態であるならば、大きなリターンは見込めないかもしれません。

 

まあリスクをある程度抑えて程々のリターンで良いと考える人には良いかもしれません。ただ将来、ポートフォリオの内容がガラッと変わることもあり得ますので、ほったらかしにするのは良くないと思います。

 

 

IQ マージャーアービトラージ ETF (ティッカー; MNA)

 

年間手数料; 0.78%

投資戦略; リスクアービトラージ

 

こちらもニューヨークライフが手掛ける買収・合併アービトラージに特化したETFで、ETFdb.comのオルタナティブカテゴリーの中では2番目に資産額が大きいETFです。ETF価格は以下の通りに推移しています。

 

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これを見るとリスクが低く安定したリターンを受け取れるように思えますが、カナリーはこのETFを購入する際はいくつか留意しなければいけないポイントがあると思います。

 

  1. ETFでの投資がリスクアービトラージのメリットを打ち消す。

リスクアービトラージの大きなメリットは、リターンを短期間で受け取ることが出来る点です。アービトラージですから利益が限定されているのは当然であり、利益率としては2-4%取れればよいほうかもしれません。しかし、この少ないリターンを半年や数ヶ月で得られるという点にリスクアービトラージのメリットがあります。しかし、このETFだと結局、1年かけて2-5%のリターンを受け取ることになるので、リスクアービトラージの恩恵を受けられません。

 

  1. 深刻な不況では大きな損失になることも。

リスクアービトラージも一応アービトラージなので、市場が落ちこんでいるときでもリターンを得ることが出来ます。例えば、昨年末にダウ平均やS&P500などは下落しましたが、リスクアービトラージでは痛手を負うことはありませんでした。市場が下落しても損失が最小限に抑えられ、さらにリターンも得られる可能性がある点はリスクアービトラージのメリットです。しかし、経済が深刻な不況に陥った場合、リスクアービトラージは株式市場並み、もしくはそれ以上の損失を出す可能性があります。というのも、深刻な不景気の下では、リスクアービトラージの利益の源泉である買収案件自体が破談になるケースが多く、買収成立に賭けていたアービトラージャーは損失を被るからです。実際にリーマンショック時、この分野は40%-50%の損失を出したと言われています。また研究では、これまでの歴史の中で深刻な不景気に陥った時だけリスクアービトラージのパフォーマンスは株式市場に相関する、つまり同じように下落するという結果が出ています。

 

以上のことを踏まえると、このマージャーアービトラージETFは「アービトラージが持つ本来のメリットを打ち消しているのに、不景気時のリスクは高い金融商品」に見えてしまい、カナリーとしては正直あまりお勧めできません。

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今回はオルタナティブETFを2つみてきました。オルタナティブETFのポジティブな側面をカナリーは見いだせず、主張がはっきりしないため記事にすることを躊躇しましたが、まあこういう記事もアリでしょう。購入を検討する際には参考にしていただければ嬉しいです。

 

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