配当利回り20%超。アメリカのロイヤルティ・トラストとは
今回は配当利回りが20%を超えるような企業たちについてお話ししたいと思います。その企業たちとはロイヤルティ・トラストです。
目次
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ロイヤルティ・トラストとは
ロイヤルティ・トラストとはアメリカの企業形態を指し、鉱山や油田を所有し、その所有権によって得た利益を株主(というよりは信託保有者)に分配する信託会社です。信託企業ですが、上場しており、証券取引所で売買できます。
さて、なぜこんなに利回りが高いのでしょうか?その理由は税制にあります。ロイヤルティ・トラストは掘削した資源で得た利益を株主に90%以上分配した場合、法人税が免除されます。つまり二重課税を回避できるわけです。このような制度が理由で、ロイヤルティ・トラストが得た利益はほぼ全て投資家に分配され、その結果高い利回りとなっているわけです。この点はREITに似ていると思います。ただ念のため書きますが、免除となるのはあくまでトラスト側の法人税であって、投資家が分配金を受け取る際には課税されます。
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ロイヤルティ・トラストを詳しく見る
ではロイヤルティ・トラストをもう少し詳しく見ていきましょう。今回はBP プルドーベイ・ロイヤルティ・トラスト(ティッカー;BPT)を例にしていきたいと思います。
このトラストはアラスカに位置するプルドーベイ油田を所有しており、企業名から分かる通り、BPによって設立されました。このトラストの直近の分配利回りは21.92%となっています。
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ロイヤルティ・トラストの損益計算書
ではBP プルドーベイの損益計算書をみてみましょう。
2017年 | |
ロイヤルティ収益(売上高) | 78,193,000 |
営業利益 | 77,039,000 |
法人税 | 0 |
純利益 | 77,039,000 |
分配総額 | 77,031,000 |
EPS | 3.60 |
一株当たりの分配 | 3.60 |
損益計算書をみると、売上高がほぼそっくりそのまま利益に落ちていることがわかります。これもロイヤルティ・トラストの特徴です。ロイヤルティ・トラストはあくまで油田、鉱山の権利を所有しているだけなので、実際にトラストが掘削しているわけではありません。掘削するのは他の企業になります。ですから費用というものがほとんど発生しません。ということでロイヤルティ・トラストの実態は、油田開発のために投資家からお金を集めて分配する金融企業のような役割になっています。そしてさらにみてみると、上記で述べた通り、法人税は一切支払っておらず、100%に近い分配率で純利益が投資家に配られています。
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ロイヤルティ・トラストの株価
次にBPプルドーベイの株価をみましょう。
ロイヤルティ・トラストの株価は、トラストが所有する鉱山や油田で掘削されるコモディティのマーケット価格に大きく左右されます。コモディティの価格が上がれば鉱山や油田の売り上げが上がり、トラストの収益と分配が増え、その分だけ株価も上がるからです。実際にBPプルドーベイの株価は2003年ごろから石油価格の上昇と共にぐんぐん上昇し、2014年ごろに石油価格が下落したのと同時に株価も暴落しています。このようなことを踏まえると、ロイヤルティ・トラストの株を買うことはコモディティの先物を買うようなものと考えてもいいかもしれません。ただロイヤルティ・トラストは先物と違って利益の分配がありますから、この点はロイヤルティ・トラストのメリットのひとつでしょう。またロイヤルティ・トラストの利回りは、例え株価が上昇しても10%ほどの高利回りを維持します。というのも、結局のところロイヤルティ・トラストの株価は分配金の増減によって決まってくるので、普通の企業株のように、株価が上昇して低利回りになるということはありません(もちろん、株価上昇前と比較すると利回りは低下すると思いますが…)。
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保有する油田や鉱山の価値も大切
株価の変動以外にも注意しなければならないことがあります。ロイヤルティ・トラストはあくまで、油田や鉱山の権利を保有している企業です。つまり、その油田や鉱山に眠っているコモディティの埋蔵量などによってロイヤルティ・トラストの価値が変わってくるということです。極端な話、眠っていたゴールドが全て掘削されてしまった鉱山のみを持つロイヤルティ・トラストには何ら価値がないことになります。ですから、ロイヤルティ・トラストの株を買う際は、トラストが保有する鉱山や油田の価値も調べる必要があります。この点は、特定のコモディティを中心に様々な事業を行う企業とは異なる点だと思います。石油メジャーなどは、石油の掘削だけではなく、ガソリンを売ったり、プラスチックを製造したりしますから、他の事業からも利益が得られるわけです。つまり、これらの企業については保有する油田の価値1つ1つについてそこまで神経質になる必要がありません。世界中の油田を持っていますし。しかしロイヤルティ・トラストは保有するいくつか、または一つの油田や鉱山に収益を依存することになりますから、油田や鉱山の状況に注意を払わなければなりません。
とここまでロイヤリティ・トラストについて書いてきました。まあデメリットもありますが、コモディティ投資に興味がある方や、「おれは石油王になるんだ!」という方はロイヤルティ・トラストを検討してもいいかもしれません。ただロイヤルティ・トラストを扱っている証券会社は現時点では限られており、サクソバンクやIB証券でないと取引は難しいと思います。ただ今後、日系証券の米国株の取り扱いも拡大していくかもしれませんから、このような企業形態がアメリカに存在することを覚えておいても損はないはずです。
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