カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

PFF嫌いのカナリーが見つけた、まずまずな優先株

以前からカナリーは、優先株はその性質上、中途半端な立ち位置であるがため、基本的には投資先として魅力的ではなく、その集合体であるPFFに投資するのは馬鹿げているという意見を持っており、このスタンスは特に変わりません。特に長期投資家ほど普通株に投資すべきだと思っています。

 

一方で、矛盾しているように感じるかもしれませんが、個別の優先株では数少ないながら、そこそこ魅力的なものがあると考えています(これは前の記事でも書いたはず)。今回はそうした数少ない優先株を、PFF嫌いなカナリーが紹介したいと思います。

 

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  • Fortive社発行 シリーズA転換優先株

クーポン:5.00%

利回り: 4.80%

額面価格: 1000ドル

 

Fortiveは工業向けの測定機器や制御機器を製造する企業です。日本で言えばオムロン辺りが近いのかもしれません(医療系の製品はないけど)。数年前にダナハーからスピンオフした企業で、S&P500の構成銘柄にもなっています。

 

Fortive社が発行する優先株シリーズAはそれなりに魅力的ではないかと考えています。その理由はこちら…

 

  •  普通株への転換権が付いている

この証券の最も魅力的な部分です。優先株のデメリットとしてカナリーは値上がり益が見込めない点を挙げています。しかしこの優先株には普通株への転換権が付いているため、普通株の値上がり益を受け取ることが出来ます。特に、Fortiveは売上高と利益を伸ばしているため、転換権は有利に働く可能性があります。

 

この証券は、最終的に2021年に普通株に強制転換されますが、その際、普通株の価格が約71ドル-91ドルであれば額面価格の1000ドルを受け取ることが出来るように転換比率が調整されており、71ドル以下、または91ドル以上になると転換比率が固定されます。一方で2021年以前に投資家の任意で転換する場合の転換価額は約91ドルです。強制転換の転換比率と比べると不利ですが、現在の株価が81ドルほどなので、そこまで遠くはありません。転換権の条件としてはまずまずといえると思います。

 

 4.8%の利回りというのは比較的高い部類に入ると思いますが、他の企業の普通株でもこれぐらいの水準の利回りを誇る普通株はあるでしょうし、また優先株の中では平均的な利回りより低いです。ただ、このfortiveという企業が成長しており、さらに普通株が成長株のように低い利回りであることを考えれば、優先株の利回り4.8%というのは、満足出来る利回りだと思います。

 

優先株を発行する企業(金融機関等を除く)というのは、バランスシートが良くなかったり、債務への利払いに苦しんでいることが多く、優先株の配当支払い能力に疑問符がつくことがよくあります。しかし、Fortiveは債務利息に対して十分な利益を生み出しており、インタレスカバレッジは10倍以上であることから、配当支払い能力は十分であると考えます。また、PFFを構成する金融機関発行の優先株には殆ど付いていない、配当累積条項(優先株への配当が滞ったり、満額支払えなくても、将来に業績が回復した場合、支払えなかった分を現金または普通株での配当で補うことを定める条項)が付いているので安心です。まあただ業績を見る限り、今のところ配当が滞る心配はあまりないと思います。

 

クーポン:6.75%

利回り: 6.48%

額面価格: 100ドル

 

クールでハリーポッターの呪文にありそうな社名を持つこの企業は、電力やガスを供給する公益企業で、S&P500を構成する銘柄です。センプラエナジーの転換優先株がそれなりに良いと思う理由はFortiveの転換優先株とほぼ同じです。この優先株普通株より高い利回りを得ながら、転換権によって普通株の値上がり益も得る可能性を持っています。公益企業でありながら、成長していますから、転換権が有利に働く可能性があります。インタレスカバレッジはここ数年間で3倍前後とFortiveよりも低いですが、公益企業であれば、3倍というのは許容範囲ではないでしょうか。

 

この証券は2021年に強制転換され、その際の転換比率は普通株の価格が113-136ドルであれば100ドルの額面価格と同等になるよう調整され、113ドル以下、または136ドル以上になると転換比率はそれぞれ0.8726と0.7326とで固定されます。2021年以前に投資家の意思で転換する場合の転換比率は0.7326です。

 

ちなみにセンプラエナジーは似たような条件でシリーズAの優先株も発行しています。こちらは利回りが6.00%とシリーズBに比べて低いですが、その分だけ転換権が有利に設定されています。

 

  • 転換権と利回り差がもたらす柔軟性

これまで紹介した2社の優先証券の共通した特徴は転換権を持ち、利回りが普通株に比べて有利な点です。この特徴は、マーケットや転換先の普通株が下落した場合に柔軟性をもたらしてくれるかもしれません。なぜか。それはヘッジで利益を得られる可能性があるからです。もし、優先株普通株配当利回り差が十分であれば、優先株を保持したまま普通株をショートすれば、空売りコストを考慮しても配当利回り差を受け取れる可能性があります。つまり、相場下落時でも痛手を負わずにやり過ごすことが出来るかもしれないのです。もちろん、配当利回り差で利益が得られるかどうかは、市場金利普通株の増配によって左右されます。またこういうことは実際にやろうと思うと、考えるより数倍難しいです。ですから絶対に上手く立ち回れる保証はどこにもないわけですが、下落時に損失を回避する「選択肢」があることは一つアドバンテージではないかと思います。

 

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  • 実は意味のないこの記事

ここまで読んで頂いて本当に申し訳ないのですが、実はこの記事は読者の皆様にとってあまり意味がありません(笑)。なぜかというと日本の証券会社が優先株を取り扱っていないからです。あくまでカナリーの自己満で書きました。

 

ただ皆様に少し考えて頂きたいのは、S&P500に入っている企業が発行する利回り4.8%から6.5%ほどの転換権付きの優先株と、大多数がストレート(非転換)の優先株で構成されている利回り5.5%ほどのPFFのどちらが有利であるかということです。もちろんFortiveやセンプラエナジーが将来どうなるかは分かりません。成長が止まったり、ビジネスが上手くいかなくなることもあるでしょう。ただ、証券の条件と2社の現状を踏まえれば、明らかに2社の転換優先株のほうが有利ではないでしょうか。そう考えると、ほぼストレートで構成されているPFFの利回り5.5%というのは優先株の中で比べれば魅力的ではなく、むしろ投資するのが馬鹿馬鹿しく思えるのはカナリーだけでしょうか。

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