嘘の口実で現金を貯める日本企業
ちょっと揚げ足をとるような記事かもしれませんが、間違ってはいないと思います。
日本企業の多くは株主還元に消極的なのは多くの方が知っていると思います。アメリカやヨーロッパの企業の中には利益分をそのまま配当や自社株買いに回す企業もありますし、配当性向や還元性向を比較すれば、少ないのは明らかだと思います。
多くの日本企業は株主還元に消極的、つまり内部留保をする理由をいくつか挙げています。例えば財務基盤を安定させるだとか、安定した配当の為などなど。まあこれらの理由について賛否はあるでしょうが、絶対間違いとは言えなさそうです。
そして内部留保のもう一つの理由として「将来にM&Aを行うため」と言う企業があります。しかし残念ながらこのような企業は投資家を騙している場合がありますのでご紹介したいと思います。
その前に、ここでの「騙している企業」とはどのような企業でしょうか。「将来にM&Aを行うため」と言いながらM&Aを行わなかった企業という訳ではありません。ここでの騙している企業とは「将来のM&Aの為に現金を内部留保すると言いながら、M&Aを内部留保した現金を一切使わずに、株式交換で行った企業」を指します。このような企業に対して投資家が怒るべきポイントは大きく二つです。
このようなことをされると、いよいよ投資家は何の為に株主還元を我慢したのか分かりません。例えば、村田製作所。彼らは2012年3月終わりの有価証券報告書の配当政策欄にこのようなことを書いています。
“内部留保金は、技術革新に対応する研究開発費、新製品や需要の拡大が期待できる製品の生産設備投資、M&Aなど、将来の事業展開のために有効に活用してまいります。”
と言いながら、翌年にこの会社は株式交換で東京電波という会社を買収しています。さて一体この会社は何の為に内部留保していたのでしょうか?
この記事によれば、確かに村田製作所は同時期に東光という会社を約174億円使ってTOBで買収していますので、まあ完全に嘘をついているという訳ではないですが…。この買収によって経営陣は更なる現金を使いたくなかったのかもしれません。しかし東京電波の買収額は約37億円であり、前年に約544億円の現金を持っていた村田製作所は東京電波も東光と同じようにTOBで買収できたはずです。しかも例え何らかの事情で現金が直ぐに使えなかったとしても、村田製作所のように安定的な利益を出し、強固な経営基盤を持つ大企業ならば簡単にCPや社債の発行、銀行からの借り入れが出来たはずです。にもかかわらず、この買収を株主還元を我慢してきた株主に負担させているのはおかしい話で、株式交換という手法を用いたことに疑問が残ります。
有価証券報告書には「M&Aの為に内部留保をする」と直接的に書く企業より、「将来の成長のために内部留保をする」と曖昧な書き方をしている企業も多く、このような企業に上記の批判は当てはまらないと思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、実際に企業がM&Aをするときには、「将来の成長のためのM&A」と主張する企業がほとんどです。「将来の成長のためのM&A」ならば、なぜ「将来の成長のための内部留保」を使わず株式交換でM&Aをするのでしょうか。このような点について日本の株主はもっと追求していいはずです。