カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

アメリカでのミニTOB(ミニ・テンダーオファー)にご注意を

カナリーの弱小ブログを見るぐらいマメな読者の皆様なら多分騙されることはないと思いますが、アメリカでは最近、ミニTOB(ミニテンダーオファー)という方法で投資家を欺くファンドがあるようです。(因みにTOBはTakeover bidの略ですが、アメリカではテンダーオファー;Tender offerと呼ばれます。)

 

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ミニTOBは発行株式数の5%未満の株式を公開買い付けすることを指します。このミニTOBは、普通のTOBに比べ、ディスクロージャーなどの規制が緩くなっています。ミニTOB自体が悪いことではないのですが、規制の緩さを利用して投資家から株を騙し取ろうとする輩がいます。まあ彼らの行為が違法とは言えないそうなので、騙し取るという言い方はよくないかもしれませんが…。

 

どのように彼らが投資家の株を騙し取るのかというと、単純にマーケットの株価より低いTOB価格でテンダーオファーをします(笑)。誰がそんなTOBに応募するのか分かりませんが、まあ株を持っている人が必ずしも金融や、株式市場に興味を持っているわけでは無いので、”テンダーオファー”の言葉に惹かれ、実際の市場の株価をチェックせずに応募してしまう人がいるのかもしれません。通常のTOBとは違い、規制の穴を突いたミニTOBでは一度応募してしまうとキャンセル出来ず、応募後にマーケットとの価格差に気づいても後の祭りになってしまうことが多いようです。特にTRCキャピタルというカナダのファンドは、この方法を用いてあらゆる企業に対しミニTOBを頻繁に仕掛け、TOBで獲得した(盗んだ)株を運用?しているようです。ファンドとして成り立っているということは、その分だけ騙されている人がいるわけで…。

 

さて、ここで機転が利く方は「もしTOBの宣言後から募集終了までの期間中に、TOB価格よりマーケットの株価が下がれば利益を得られるのでは?」と思うかもしれません。しかしミニTOBの場合、応募の期限やTOB価格を募集側の任意で変更できるケースが多いために株価が下落した場合、TOBの延期やTOB価格の変更、またTOB自体のキャンセルという可能性が高く、投資家が利益を得ることは不可能ですし、ほぼ100%損するでしょう。まあ敢えて応募するメリットを挙げるならば、税金の関係で利益調整を図りたい時ぐらいでしょうか?それぐらいしかメリットが思い浮かびません。

 

この件についてSECは、ミニTOBに応募する際には、マーケット価格をチェックすること、そしてミニTOBに関する開示情報をよく読むようにと強く警告しています。恐らくTOBの開示情報は投資家を欺くために難解な英語になっているでしょうから、我々日本人は近づかず、無視するのが無難でしょう。

 

恐らく応募する方はいないと思いますが、皆様くれぐれもご注意ください。