カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

GNW 利益率40%のスペシャルシチュエーション

GenworthはS&P400に構成されている保険会社です。この企業は現在、中国のOceanwideという企業に買収されることで合意しています。しかし、この買収合意は2016年10月になされたものです。つまり、2年経っても買収が成立していない状態で、その結果、GNWの株価は買収価格である5.43ドルから30%ほどのディスカウントで売られており、買収成立時には40%の利益を得られる可能性があります。

 

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チャートはこんな感じ。

 

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 買収成立に対してポジティブなニュースが流れると5.43ドルに近づき、ネガティブなニュースが流れると離れていくというのを繰り返しています。

 

今年も既に3月に入っていますが、もし仮に今年中に買収が成立すれば年率は40%以上になるでしょう。この水準は、このようなスペシャルシチュエーションの部類では非常に大きい利益率となります。しかしこのような大きい利益は、それなりのリスクから生み出されることを忘れてはいけません。ここのリスクとは買収不成立のリスクです。今回は40%の利益を生むリスクを見ていきたいと思います。

 

  1. 規制当局が買収を承認しない。

買収合意からこれほど時間が経っているので、いくつかの規制当局からは許可が下りているのですが、アメリカの金融規制機関であるFINRAとカナダの規制当局からの承認を得られていません。この2つの機関から承認を得ることが買収成立のための絶対条件です。さらに、Oceanwide側も中国当局から許可を得なければなりません。というのも、ここ最近中国政府は外国への資本流出を規制しており、この点についての許可が必要です。この3つの当局から承認を得られるかが不透明なので、買収価格と株価の間にスプレッドが生じています。一方で、この3つのハードルを両社がクリアできた瞬間に株価は買収価格の5.43ドルまで上昇するでしょう。

 

  1. ズルズル長引く買収。時間が分からない

このような投資(投機)では時間がものを言います。短ければ短いほどベターで、その分だけ年率換算のリターンが増えていきます。しかし、今回の買収では最終的にいつ当局の承認を得られるかを予測することが極めて難しい状況で、さらに長期化することも考えられます。買収完了までの時間が長引けば長引くほど、年率リターンが減少しますから、この点もリスクの一つです。

 

さらに、買収の長期化は買収成立の確率を下げます。というのも、企業は買収のために、投資銀行や弁護士に高額なアドバイザリー費用を支払っており、買収完了までの時間が予想以上に長期化すればこのような費用がかさんでくるからです。例え当局からの承認を得られる公算が高くても、高額な買収費用に耐え切れずに買収話が破談になるケースはよくあります。

 

  1. チャイナディスカウント

 

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まあこの買収案件ではあまり関係ないかもしれませんが、中国企業アメリカなどの企業を買収する際には、他の買収案件と比較して買収価格と株価のスプレッドが大きく開くことがあります。これはなぜかというと、数年前に中国企業たちが米国企業を積極的に買収した際に、中国企業企業統治などに問題点が多く、多くの買収案件に対して許可が下りなかったということがありました。そのような経緯から、中国企業が買収に関わる際は買収成立への道のりの中で特有のリスクがあると認識されており、そのリスクによってスプレッドが他の買収案件に比べて開く傾向があります。まあ要は、中国企業はあまり信頼されていないわけです(笑)。

 

カナリーとしては、買収費用がかさみ、両社が待ちきれずに買収が破談することはあり得るなと思い、この株については買っていません。ただ、長期化しても買収が成立するときは成立するので、買ってみても面白いとは思います。もしGNWをポートフォリオに入れた状態で今年中に買収が成立すれば、あとは寝ていてもS&P500をアウトパフォーム出来ると思います(今年に限って言えば)。また、これだけスプレッドが開いていれば、コールオプションのロングでも買収成立時に利益を出すことが出来ると思います(期間は長いほうが良いかと)。GNWを原資産とするオプションを取引できる方は買収不成立時のダウンサイドリスクを抑えられるので、これはこれで面白いかなと思います。

 

※投資は自己責任でお願い致します。

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