カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

DVMT DELLが作る変態向けの面白いシチュエーション

(この記事は全てカナリーの自己満によって生成されています。)

 

リーズナブルなパソコンを作るデルですが、親会社は現在、デル・テクノロジーという名前となっています。現在デルはトラッキングストック(ティッカー; DVMT)というものを発行し、上場させていますが、このトラッキングストックが少し面白い展開になっているので、書きたいと思います。

 

面白い展開とはどういうことかを先に言うと、現在デルのトラッキングストックは105ドル前後で売られていますが、デルは株主総会を終え次第、今年中におよそ120ドルで全て買い取る予定でいます。

 

もちろん、このスプレッドとおよそ120ドルには色々わけがあるので、それについても書きますが、その前にこの株について少し語ります。

 

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まず、トラッキングストックとは何ぞやと簡単にいいますと、子会社等の業績に連動した株のことです。一昔前にソニーも発行していたらしいです。そしてこのデルのトラッキングストックはVMwareの業績に連動します。恥ずかしながら、カナリーは今回初めてVMwareがデルの傘下であることを知りました。

 

一方で、デルは最近、親会社であるデル・テクノロジー自身の株を公開したいと考えるようになりました。昔は公開株でしたから、再上場させたいというわけです。しかし、デル自身が再上場するためには、このトラッキングストックを未公開株にする必要があります。そのために今年中にこの上場しているトラッキングストックを買い取ることにしたわけです。

 

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デルは当初、およそ109ドルでトラッキングストックを買い取ると発表しました。ですが、この買取計画はカール・アイカーンや、アルプス電気の騒動に参戦しているエリオットなどのヘッジファンド勢から大きく批判を受けていました。アイカーンはトラッキングストックには144ドルだか、300ドルだかの価値があると主張していたようです。まあ確かに中身は現在150ドル台のVMwareと同じなので、それぐらいの価値があるのかもしれません。しかしデルは今週になって買い取り計画を109ドルから120ドルに修正し、アイカーンを除いたヘッジファンド勢と合意したことを発表しました。

 

さて、ということは普通に考えれば、現在105ドル前後のトラッキングストックを買えば15ドル分の利益を得られるわけですが、そんなに単純ではなく、上記に書いている通り、色々考えなければいけないことがあります。

 

ここから話がちょっと複雑になりますよ。頑張って付いてきて下さいね。

 

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どういうことかというと、まず、およそ120ドルの買い取りというのは、現金での交換、または株式での交換のどちらかを、トラッキングストックの株主自身が選択出来ることになっています。しかし、現金交換の総額には上限があるため、現金は比例分配される可能性が極めて高いです(こういう条件はアメリカではよくあります)。なので、実際は現金交換と株式交換の組み合わせで、120ドルが支払われるとデルは予想しています。しかし、この株式交換が厄介で、デル・テクノロジーのクラスC株との交換になるわけですが、この株は現在未上場なのです。デルは最終的にこのクラスCを上場させる予定ですが、このクラスCが上場時に一体いくらになるのかが明確に分からないわけです。つまり投資家はトラッキングストックが最終的に120ドルに変身しないのではないかと、疑いの目を持っているわけで、その分がスプレッドとして反映されています。

 

更に複雑になりますが、続けますよ。

 

今回の場合、ほとんどの投資家が現金交換を選択するでしょうから、現金は比例分配となるでしょう。投資家全員が現金交換を選択した場合、120ドルのパッケージのうち約70.28ドルが現金での支払いになるでしょう 。そして120ドルのパッケージの内、残りの41%分が株式交換になるわけです。一方でデルは、全て株式交換でパッケージを受け取ると選択した投資家にはトラッキングストック1株につきクラスC株を約1.5043株から約1.8130株の割合で付与するとしています。この割合は12月に行われる株主総会直前の17日間のトラッキングストックの株価と現金を選択した人の数(厳密には少し違います)によって決まります。

 

ここまで、ディールの条件を説明してきました。条件は複雑ですが、現在の状況において利益を得られるかどうかのポイントは単純明快です。それはクラスC株が果たしていくらで取引されるかです。

 

例えば105ドルでトラッキング株を入手したとして、仮に受け取る現金が70.8ドルで、クラスC株への交換比率が1.5043と仮定した場合、クラスCが大体32.70ドル以上で取引されれば利益を得ることが出来ます。 (すみません、計算方法を含め完全に間違えていました。トラッキングストックを105ドル程で購入した場合、デルのクラスCの株価が大体45ドル以上であれば、利益が出ると思われます。追記18/11/20)

一方でそれ以下なら損失となるわけです。ですから、未上場株の価値を見極めることが重要となるわけです。しかし実際問題、未上場のデル・テクノロジーにどれだけの価値があるのかを見積もるのは極めて難しいです。しかも、赤字企業ですからね。

 

カナリーはこのタイミングでの投資(投機)はそれなりにおいしいのではないかと思っております(一番旨味がある部分は過ぎてしまいましたが)。なぜかというと極端にリスキーな投資だとは思えないからです。というのも、クラスCの交換比率はトラッキングストックの株価が現在の104ドルに近づくほど高まり、交換比率が最大で約1.8株となるからです。一方でトラッキングストックの株価が上昇すればクラスC株の交換比率は少なくなりますが、トラッキングストック自体の株価が上がっているわけですから、売却すれば利益を得ることが出来ます。ですので、このディールのリスクは、限定的なのではないかとカナリーは考えています。

 

ただ一方で、現在のトラッキングストックも、再上場後のDell株も同じマーケットによって値付けされると考え、マーケットが常に効率的な値付けをすると考えた場合、この株式交換でのチャンスは見込めないことになります。というのもこの考えに基づけば、トラッキングストックの株価は将来交換されるデルの株価を既に反映していることになりますから。つまり、マーケットが非効率なのではなく、単純にデルの見積株価が馬鹿げている可能性があるということです。そう考えると難しい投資になります。ただ観察するだけでも価値があるかもしれません。(2018/12/20追記)

 

と、ここまで自己満記事を書かせて頂きました。カナリーはこの件について考えを巡らせている途中です。もし、取引を検討する場合は自己判断でお願い致します。ちょっと複雑なディールなので、もしこのディールに興味がある私のような変態チックな方は、この薄っぺらい記事だけに頼らず、デルが発表している公式文書等を読むことを強くお勧めします。

 

デルの公式発表

https://investors.delltechnologies.com/news-releases/news-release-details/dell-technologies-announces-significant-enhancements-class-v

(記事の中で間違いがあったらすみません)

 

因みにこのデルのトラッキングストックはマネックスやサクソバンクで取り扱われているようです。楽天やSBIでは取り扱いがないので注意して下さい。

 

※投資は自己責任でお願い致します。