カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

SCANAがスペシャルな状況だった話(あけおめ)

あけましておめでとうございます!弱小ブログですが今年もぼちぼち書いていくつもりですので、どうぞよろしくお願い致します。新年1発目の記事ですが、いきなりマニアックな記事を書きたいと思います。もう既に終わってしまった話ですが。

 

先月、ドミニオンエナジーとスキャナはついに買収を完了させることが出来ました。この買収については以前触れたことがあります。

www.canary-w.com

この記事の時点で買収成立、不成立のどちらに転ぶか分からなかったので、どっち付かずな感じで書いたつもりです。

 

さて、この記事の最後にアービトラージャーがうんたらかんたらと書きました。実はこの買収案件ではスキャナの株式ホルダーやアービトラージャーはおよそ20%-30%の利益を数ヶ月で手にするチャンスがあったのです。

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 このディールではスキャナ株1株に対してドミニオン株0.669株が付与される予定でした。ここでドミニオン株の10月の株価を見てみると、

 

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おおよそ70ドルから74ドルを行き来していました。そこで大体ですがドミニオン株を70ドルとみた場合、スキャナ株の買収成立後の理論価格は、46ドルほどになります。ではスキャナ株はどうだったかというと、

 

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(左軸が株価、右軸がスプレッド)

35から40ドルで取引されていました。ということは買収成立後の理論価値とスキャナ株の間におよそ20%から30%ほどのスプレッドがあったことになります。つまり、最終的に買収成立に賭けていた投資家、投機家達はスプレッド分を2-3か月ほどで利益にすることが出来たわけです。

 

と、後から見るとノーリスクのビックチャンスに見えますが、実際利益を取れた彼らも買収完了まではかなり不安だったと思います。というのも、買収成立までにはいくつか困難なハードルがあったからです。最も大きな障壁がサウスカロライナ州の公共事業部門の承認でした。利用料金や利用者が以前から払っていた原発工事費の点でサウスカロライナ州ドミニオンはなかなか折り合いがつかず、サウスカロライナ州が合併を承認しない、またはドミニオンが機嫌を損ねてディールを壊す可能性がありました。もしこのようなことが起きた場合、スキャナ株は下落したでしょうから投資家たちは不安だったと思います。さらにスキャナはウエスチングハウスが破綻したせいで原発工事に対して大きな損失を被っており経営難へまっしぐらでした。そこにドミニオンが現れてくれたわけですが、もし仮にこの買収が成立せずに見捨てられた場合、株価は一気に急落していたでしょうから、このダウンサイドリスクもスキャナ株ホルダーは負っていたわけです。

 

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このような点にカナリーは恐怖を感じていたため見送りました。まあ結果的にドミニオンはハッタリをかましていただけでしたが…。リスクもあった一方で、このディールに関わった投資家や投機家はマーケットが暴落しているここ数ヶ月の間に20-30%の利益を得たわけですから、羨ましい限りです。

 

もう過ぎ去ったことを記事にしているわけですが、「こんなこともあるんだな」と、参考にしていただければと思います。本当はもう一つ、今度は現在進行形のディールを紹介(推奨ではなく、あくまで紹介のつもり)しようと思いましたが、長くなりそうなのでまた次回にしたいと思います。

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