カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

株価の騰落だけで売買する何も知らない愚かな投資家

株価が下落すれば買い、上昇すれば売る投資家の方は多いと思います。それはそれで良いと思います。割安で買って割高で買えれば理想的ですから。しかし時々、株価が騰落する明らかな理由があるにも関わらず、それを知らずに売買する人がいます。これは非常に愚かなことです。

 

「株価が動く明確な理由」とは今回のジョンソンエンドジョンソンのような不祥事やスキャンダルの類でもなければ、経済や事業の先行きといった理由ではありません。カナリーが指す「明確な理由」とは合併やスピンオフを含んだコーポレートアクションのことです。

 

具体的な例をあげましょう。

 

例えば…

 

「株価が下落したのでA株を買いました!」とネットで言っている方がいました。恐らく、下落したから割安と思い買ったのでしょうが、この方はA株がその日下落した理由が良く分かっていません。しかし、この日、A株が下落したのには明確な理由がありました。なぜ下落したか。それはA企業が前々から発表していた株式交換による買収をようやく成立させたからです。つまり、翌日からそのA株は希釈化されることとなり、その分を調整するために下落したのです。希釈化されれば、株式価値も下がりますから、株価が下落したから割安で買えたというわけではありません。しかしこの方は自分が非常に割安な価格でA株を買えたと思い込んでいます。おめでたいことです。株式交換による買収は何か月も前から発表していたのだからそれぐらいは知っておくべきでしょう。

 

あと、スピンオフを知らずに買う人。この方は下落しているからといってB株を買うのですが、B株が下落しているのはスピンオフが行われるからです。この方が哀れなのは、スピンオフによって付与される新会社株式の権利落ち日を既に過ぎてから買っていることです。まあただ、スピンオフされる部分がいらないのであれば、それはそれでいいと思いますが(スピンオフ株を処理する手間もありますし)。しかしこの方はスピンオフがあったことすら知らず、自分は割安で買えたと思い込んでいるのでしょう。ただ、スピンオフした分、企業価値はその時点で下落していますから、割安で買えたわけではありません。

 

この方たちが哀れなのは、何も知らずに自分が株価下落によって割安な水準で買えたと思っていることです。しかし、実際には企業価値や株式価値は、株価とともに下落しているわけですから、割安で買えたわけではありません。もちろんコーポレートアクションは将来、企業価値や株式価値を向上させるかもしれませんから、それを考慮して買うなら理解できますが、そもそも彼らはコーポレートアクションがあったことすら知らないので話になりません。

 

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一方で、株価が上昇し、利益が出ているからと言って株を売却し、利益を逃す方もいます。この方は、C株を保有していましたが、その方にとっては良く分からない理由で株価が少しずつ上昇し、利益が出たためC株を売却しました。しかし、このC株が上昇する理由は明確で、C株が買収される予定であることが発表済みであったからです。そして、この方が売却したとき、C株の株価は買収成立時の理論価値に対して15%-20%のディスカウントで値付けされていました。結局買収は成立しましたから、10%以上の利益をこの方は逃していることになります。もちろん、ディスカウントの分だけ買収が成立しないリスクもあったわけですが、買収される予定であることすら知らなければ、この点を考えるまでには至らないのです。

 

コーポレートアクションを意識するのは売買するときだけではありません。分析するときもそうです。例えば、タイムワーナーの買収発表から買収成立までにAT&Tを買った方は買う前に1株利益を自分で算出したでしょうか?算出した際に、タイムワーナー株に対する株式交換分を考慮して算出したでしょうか?「自分で計算せずにGoogleのPERを見た」、「自分で算出したけどタイムワーナー株への株式交換は考慮していない」、そういった方は恐らくAT&TのPERを誤った形で認識し、購入に至っていると思います。まあ、買収成立後に1株利益が上がれば結果オーライと考えてもよいかもしれませんが、分析の際はコーポレートアクションによって希釈化される株式数をきちんと意識して、売買の意思決定をすべきだと思います。特にこれからディズニーを買う人はね。

 

コーポレートアクションの発表から成立までは、2,3ヶ月、長ければ1年以上かかりますから、情報を入手する時間は十分あるはずです。まあ確かにアメリカにおいてはコーポレートアクションが頻繁に起こり、規模が大きいとも限らないため、すべてを追いかけるのは確かに難しいですが、やはり最低限、自分の持ち株や購入予定である株については知っておくべきだと思います。それが面倒と感じるならばETFを検討すべきかもしれません。

 

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