カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

日本の株主総会に思うこと 株主の質について考える

先週、多くの企業が株主総会を行ったと思いますが、カナリーはこの時期になるといつも、この国の株主の中には、株主という立場をよく分かっていない人が多いのではないかと思ってしまいます。これは他のブロガー様も言っているかもしれませんが…

 

株式ブログを見る多くの分別ある投資家の方はご存知だと思いますが、株主は企業の利益を享受し、そしてより多くの利益を受け取る為に、優れた取締役や経営者を選んだり、経営について、株主総会であれこれ言う権利があるわけです。ただ、日本の投資家はその権利を超えるようなことを株主総会で主張していると思わざるを得ません。

 

一番目に余るのが、プロ野球球団を持つ親会社の株主総会。よく選手や監督のことについて、株主総会であれこれ言う人が多いらしいですが、残念ながら株主には選手や監督についてあれこれ言う権限は株主には無いし、そのような質疑応答は株主総会を無駄にしているとカナリーは思います(もちろん球団を愛する気持ちは理解できますが…)。

 

まず第一に、株主は基本的に労働者に対する人事権を持ちません。プロ野球選手や監督も球団、つまり子会社の労働者な訳ですから、労働者である彼らの人事権は株主にはありません。まあ大株主なら力づくで色々出来そうですが、それは有意義なことではないでしょう。なぜなら、球団の収益は、親会社からすると微々たるものだからです。例えば西武ライオンズの純利益が親会社の純利益に占める割合は1%程しかありません(参考https://pl-bs.net/seibulions/)。阪神やヤクルトも同じような感じです。”親会社の株主”は、株主総会でメインビジネスである鉄道や不動産といった、より株主利益に直結したことについて話すべきだと思います。つまり「打率が低いからアイツを使うな」といった意見は株主総会を有意義に活用しているとは言えず、株主総会の趣旨を逸脱している訳です。

 

「球団が弱ければ、本業のマーケティングにも影響するだろう!」と反論する方もいると思いますが、正直関係ないです。考えれば分かると思いますが、「ライオンズが弱いから、池袋へ行くのに西武線ではなく、東武鉄道を使っている」とか、「タイガースが弱いから、梅田に行くときでも阪神電車には絶対乗らない」とか、そういう話は聞いたことありませんし、そんなことにはならないでしょう(笑)。つまり売上や利益に大きく影響する訳ではないのです。ヤクルトも球団の順位がどうであろうとも、利益はしっかり伸ばしています。

 

以上のようなことから、カナリーは株主が球団についてあれこれ言うのはちょっと違うんじゃないの?と思っています(本業に影響しそうなスキャンダル等があったとかなら話は別ですが)。もし球団のことについて聞きたいとしても、例えば本業との相乗効果やマーケティング効果について意見や質問をすべきではないでしょうか。

 

もう一つ、球団の話とは全く別のことですが、時々株主総会においてリストラに反対意見を表明される方がいらっしゃいますが、これについてもカナリーは疑問に思っています。

 

恐らくリストラに反対する方の多くは企業OBだと思いますが、リストラ(もちろん場合にもよりますが)は企業の余分な費用を削ぎ、経営効率性を高め、利益をより大きくする為の重要な手段であり、本来株主にとってはプラスに働くはずです。しかしこれを株主の立場から頭ごなしに反対するのは、本当に企業のことを考えているのか疑問に思うところですし、じゃあどうするの?っていう感じでもあります。もちろん、このような道徳心のある人々が集まるこの国は素晴らしいと思いますし、誇りに思いますが、一方でこのような感情的な考えは、資本主義や会社経営にとってマイナスポイントであることも確かです。株主はリストラについて、労働者の立場ではなく、企業の利益や株主価値の観点から評価し、意見表明すべきだとカナリーは考えます。

 

最近の日本では経営者の質が多く問われていますが、カナリーは、経営者の質に影響するものの一つとして、株主の質もあると考えています。つまり、経営者と株主双方がレベルアップしていかなければなりません。株主は単に経営者の質を問うのではなく、自らの質についても考えてみる必要がありそうです。