カナリーの米国株10-Kコレクション

米国株10-KやAnnual reportの訳を気の向くままに

D ドミニオンはスキャナを買収できるのか?というか買収する気あんのか?

今年初め、公益企業であるドミニオンサウスカロライナに本拠地を置くスキャナを買収する意向を発表しました。スキャナといえば、東芝傘下のウエスティングハウスの経営破綻によって原発の建設費用を賄えなかった結果、大きな損失を抱え日本でもニュースになった公益企業です。

 

買収計画発表から10ヶ月が経ちますが、ディールがトントン拍子に進んでいるわけではありません。公益企業であるが故に様々な機関から承認を得なければなりませんからね。以下が主な審査機関と審査状況です。

                        審査機関

   状況

スキャナ株主(機関ではありませんが…)

承認

独占禁止法(司法省)

黙認(承認)

原子力規制委員会(NRC)

まだ

エネルギー規制委員会(FERC)

承認

サウスカロライナ公益事業委員会(SCPSC)

まだ

ノースカロライナ公益事業委員会(NCUC)

まだ

ジョージア公益事業委員会(GSPC)

承認

 

普通ですと独禁法の黙認(承認)や株主の承認といったことが買収の道筋の中で最も重要になってくるわけですが、今回の場合、サウスカロライナの機関の承認等も重要で、承認が容易ではないと考えられています。その理由としては、ドミニオンが買収した後、原発の建設中止の損失を不当な形で利用者の料金で補うのではないかと当局が懸念しているからです。

 

更にこのディールが破談に終わる可能性として、ドミニオン自身が買収を止めることも考えられます。サウスカロライナ議会は、原発関連の損失を補填するための利用料金値上げ分をカットすることを議会で承認?(法案化?)しました。もしスキャナが思うように利用料金を値上げ出来ない場合、原発関連の損失をうまく回収できないことになりますから、ドミニオンにとっては都合が悪いわけです。特にアメリカの場合、ディールが完全にクローズする前であれば破談に出来てしまいますから、ドミニオン自身がディールを壊す可能性はあり得ると考えられます。ただ破談とまでは行かなくとも、スキャナ株の価値を低く見積もった新たなオファーをするかもしれません。このような要因からスキャナ株とドミニオン株のスプレッドは依然として大きいままとなっています。

 

ただ、スキャナが救われない場合(つまり破綻した場合)、電力利用者含め誰の得にもならないことは明らかですので、当局が妥協することも考えられます。また、ブルームバーグによれば利用料金値上げ分のカットが議会で決定した後も、ドミニオンのCEOは買収を進める意向を示していますから、ドミニオンは買収に対してある程度の決意を持っているのかもしれません。

 

とここまで色々書きましたが、どうでしょう。ドミニオン株を持っている投資家の方は、買収が破談することを望んでそうですが。スキャナ株を持っている方は、ドミニオンにすがりたい思いかもしれません。そしてアービトラージャーは買収成立を願って、毎日ひざまずいて天に祈りを捧げていると思います。様々な思惑、感情が交錯するディールですから、今後も見ていきたいと思います。

 

※投資は自己責任でお願い致します。